箱根駅伝、勝ち上がる弱小校のすごい「戦術」 雑草軍団による大物食いには"理由"がある

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潰滝は今季トラックシーズンで大活躍。日本選手権の3000m障害を制すと、夏にはユニバーシアードの代表として、5000mと1万mに出場している。川崎監督は、スカウティングのポイントが明確なだけでなく、選手へのアタックも素早い。特に高校1年生をチェックして、「君は強くなるよ」と声をかけているという。反対にどの大学も欲しがるトップ選手には、「声をかけるだけムダなので、余計なことはしません」と勧誘合戦には加わらない。

そして、ある程度の実力がついた選手には、オリジナルの練習メニューを提供している。「当然、全員でやる練習もあるんですけど、ウチはオーダーメードの練習が多いんですよ。それぞれの考え方や個性がありますから、そのあたりはうまく使い分けているつもりです」と川崎監督は話す。だからこそ、潰滝のように学生長距離界を代表するようなエースも誕生しているのだ。

「8区」に懸ける理由

箱根駅伝の戦術でいうと、中央学院大学は「8区」に必ず強い選手を起用してきた。過去2回、8区で区間賞を獲得しており、この3年間も区間8位、3位、8位と安定した成績を残している。この理由については、

「8区はほかの大学が軽視している区間なので、差をつけるとしたらそこしかない。なおかつ8区は後半に遊行寺の上り坂があるので、バテると大差がつくんですよ。稼ぎたいという思いと、リスクを最小限にしたいという思いから8区をポイントにしています」

と説明する。少ない戦力でいかに効率よく戦うのか。他大学と比べると、一見、アンバランスな区間配置こそが、川崎監督が”勝つ”ために考え抜いた独自の戦略だった。

今年の中央学院大学はエース潰滝を軸に戦力が充実。8区にも「秘密兵器」を起用する予定だという。チームは「5位以内」を目標に掲げており、ジャイアントキリングが見られるかもしれない。

大物食いで注目される学校がもうひとつある。第82回大会(2006年)で箱根ファンを沸かせた亜細亜大学だ。

有力校にハプニングが発生して、優勝ラインが下がったこともあり、独自の「堅実駅伝」で総合優勝をさらった。当時の亜細亜大学は1万mの平均タイムが9位。この年度は出雲が8位、全日本は11位という成績だっただけに、その快挙には誰もが驚かされた。

雑草軍団だった亜細亜大学を箱根駅伝で勝たせるマジックを見せたのが、岡田正裕監督(現・拓殖大学監督)だ。高校時代、インターハイを経験した選手がほとんどいないチームが箱根を制すことができたのは、「箱根駅伝」だけを考えて強化してきた結果だった。

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