ラグビー日本代表人気を支えた「影の立役者」 「五郎丸?え、船ですか?」時代を超えて
11月1日、ラグビーワールドカップ2015 イングランド大会が幕を閉じた。世界一をもぎ取ったのはニュージーランド。史上初の2連覇を果たし、世界中を熱狂させた。日本のラグビーファンもテレビにくぎ付けになった。
日本でここまでラグビー人気が高まったのは、新日鉄釜石や神戸製鋼などの社会人チームや、早明戦で国立競技場が超満員にふくれあがった70~90年代以来、いや、日本のラグビー史上初ではないだろうか。トリガーとなったのは、9月19日の南アフリカ戦。世界ランキング13位の日本代表が、過去2度もワールドカップを制している世界ランキング3位の南アフリカを逆転で破る大金星を挙げた。その夜を境に、日本のラグビーを取り巻く環境は一変した(ランキングは対戦当時)。
世界中のラグビーファンが、この試合結果に興奮し、震え、涙した。中でも、ひときわ感動をこらえきれず、涙する男が、あの日、会場となったロンドン郊外のブライトン・コミュニティスタジアムにいた。日本テレビのスポーツ局プロデューサー・渡辺卓郎氏だ。
日本テレビは、2007年のフランス大会から3大会連続でラグビーワールドカップの放映権を獲得しており、渡辺氏は2009年からディレクターとして、2012年からはプロデューサーとして同局のラグビー担当を務めている。「今年失敗したら、日本ラグビーに未来はない」。その「ものすごい危機感」を原動力に、選手やラグビー協会と二人三脚で、メディア界から日本のラグビーを盛り上げようと努力してきたひとりだ。
ことあるごとに「時期尚早」と言われたラグビーを押し続け、とうとうブーム再来という大輪の花を咲かせた陰の仕掛け人、渡辺卓郎氏に話を聞いた。
日本が勝てると思う人は本当に少なかった
ーー南アフリカ戦はものすごい試合でしたね。試合終了直前、敵陣深くでのPKチャンスでスクラムを選択し、アマナキ・レレイ・マフィからの、最後はカーン・ヘスケスが左隅に飛び込んでのトライ! あれには鳥肌が立ちました。私はまったくのラグビー初心者ですが、つい引き込まれてしまいました。
正直な話、試合前は、まさか南アフリカに勝てるとは思っていませんでした。南アフリカ戦の直前に開催されたアイルランドーカナダ戦が50対7で、日本テレビのラグビー解説者である大畑大介さんと、こういう結果だったらつらいね、なんとか20点差以内にはしたい、それなら健闘と言えるのではないか、と話していました。ラグビーを知っていれば知っているほど、日本が南アフリカに勝てると思っていた人はいなかったと思います。
ーーそれが、序盤から互角、いや互角以上の戦いぶりでしたね。
あれよあれよと先制するわ、逆転するわで……。ここにくるまで本当にいろんなことがあったので、思うところもあり、最後は涙が止まりませんでした。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら