ラグビー日本代表人気を支えた「影の立役者」 「五郎丸?え、船ですか?」時代を超えて

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ーーテレビ局のプロデューサーだったら、自局の番組でラグビーや選手を紹介することは簡単なのでは?

とんでもない。日本テレビは今、おかげさまでかなり視聴率が好調なのですが、それは各番組のプロデューサーが、自分の番組のクオリティコントロールをきっちりやっているからです。

テレビに選手を出すのは、とてつもなく難しい

渡辺 卓郎(わたなべ・たくろう)
41歳。1998年入社。「スーパーJockey」「KinKi KidsのGyu!」「ピカイチ」などを担当後、編成部へ。2007年、念願のスポーツ局に異動。巨人担当番、NFL、競輪、野球担当を経て現在のラグビー担当となる。

視聴率が取れているから、誰を出しても何をやってもいいよ、なんていうプロデューサーはひとりもいません。そんなところに、人気のない人を出すなんて、ありえないのです。ですから、世の中に名前も顔も売れていないスポーツ選手を、人気あるバラエティ番組や情報番組に出すことはめちゃめちゃ大変です。

ジャイアンツの坂本勇人選手や、阿部慎之助選手といったクラスの超有名選手でさえ、日本シリーズの優勝後や、シリーズ開幕直前というタイミングでなければ、番組側からの出演オファーはそうそうありません。

それに、現役選手にしたって、オフ中ならまだしも、大事な試合前にそうした番組に出るということも、ほぼありえないですね。だから番組側と選手側のバランスとタイミングが本当にうまく合わないと、メディア出演って難しいんです。

ーーなるほど、それは意外でした。結局、今大会前に、代表選手のメディア出演はかなったのですか?

はい。でも、それまでには下地づくりが必要でしたね。

2007年のラグビーワールドカップ放映権の獲得に尽力した人が、今、バラエティ番組の統括を担当する制作局長で、この人がもともとラグビーをやっていたこともあり、応援してくれる土壌はありました。彼の発案もあって、まず「日テレラグビー部」を社内で立ち上げたのです。

これは、ラグビーをやるのではなく、ラグビーをネタに飲み会をするという集まりなんですが、まずそういった機会を通して、社内にラグビー好きを増やそうと思いました。でもそれだけではラグビーの面白さが伝わらないので、時には、代表の大野均選手やリーチ・マイケル選手にも来てもらって、選手自身の魅力を感じてもらう機会をつくりました。アナログなやり方ですが、地道にそれを続けていたらラグビー好きの輪が広がって、後々、番組でラグビー選手を起用したいとか、ラグビー企画をやりたいという声が出てくるようになったんです。

そのひとつとして、「行列のできる法律相談所」で、五郎丸歩選手を起用しようという話が浮上しました。これは聞いた話ですが、起用を決めてくれた担当が、最初、番組の企画会議で「今度の収録(今年の5月)で五郎丸を出します」と発言したら、「五郎丸? え? 船ですか?」って聞かれたらしいです(笑)。それくらい、少し前まで知名度はありませんでしたね。

でもこの五郎丸選手の出演した回の結果(視聴率)がまずまずだったので、「ほかにラグビー選手で面白い人いる?」と番組側から聞かれるようになり、次につながる関係性になりました。歯車がかみ合ってきたのを実感しましたね。

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