ラグビー日本代表人気を支えた「影の立役者」 「五郎丸?え、船ですか?」時代を超えて

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ーーマガジンハウスの人気女性誌『anan』にも飛び込み営業したと聞きました。本当ですか?

本当です(笑)。担当の方のお名前も何もわからないので、とりあえず、編集部に突撃電話しました。「編集長か、副編集長さんはいますか?」と話したら、たぶんバイトの子が出たんでしょうね。「今いませんので」と電話を切られそうになって、慌てて「実は、ラグビーの担当をしていて、企画を持ち込みたいんですけど」と言ったら、「わかりました、送っておいてください」と、また電話を切られそうになって(笑)。

なぜテレビ局のプロデューサーがそこまでやるのか

ーーそれは大量の企画書の中に埋もれてしまい、いずれゴミ箱に入ってしまう流れですね(笑)。

そうなんです。だからお話も含めて聞いてほしいと粘って、また3日後くらいに電話しました。なんとか北脇さんという方にアポが取れて、どういう人かなと思って調べたら、編集長だったので、びっくりしました。アポまでに企画書を3つ書いて、ひょっとしてラグビーがどういうものかもわからないかもと思ったので、選手一人ひとりの人柄や得意なプレーはもちろん、好きな食べ物や好みの女性などのトリビアも載せた資料も作って持って行きました。

ーーそれですぐに企画になったのですか?

いえ、それからまったく音さたがありませんでした(笑)。気になって仕方ないけど、毎週電話したら、うざがられると思ったので、ちょうど1カ月後くらいに再度電話して会いに行ったら、この人がラグビー担当ですって担当を紹介してくれて、9月23日号で実現しました。

ーー渡辺さんの必死な感じが伝わってきますね。普通、テレビ局のプロデューサーが、そこまでやるものなのでしょうか?

「危機感」がいちばんの原動力でした。2015年は、日本で開催する2019年のワールドカップ前のラストワンチャンス。これが盛り上がらなければ、2019年は絶対にうまくいかない。そうなったらやばい、日本ラグビーの未来はない、という危機感はものすごかった。僕だけじゃない、選手自身も協会も本当にそう思っていたんです。

だから社内でも社外でも、やれることはなんでもやらなきゃいけないと思っていましたし、選手もそれを理解してくれて、大変な練習の合間を縫って、メディア出演に協力してくれました。

ーーみなさんで一丸となって、あらゆる手を尽くしたんですね。

日本テレビだけでラグビーを盛り上げても仕方ないと思い、他局も、新聞も、雑誌も、Webでも、さまざまなメディアでラグビーを話題にしたいと思っていました。テレビすら見ない、今の若い人にどうやったらラグビーに興味を持ってもらえるかと考え、テレビ以外のアプローチにもいろいろトライしました。ラグビー好きは黙っていても、ラグビーのネタを見てくれますが、そうでない人には、別の目線からのアプローチが必要です。その結果、ラグビーってどういうスポーツかな、とか、この選手はどんなプレーをするのかな、と思ってもらうきっかけにしてもらえればな、と。

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