ボーナスの「無駄遣い」を防ぐ超簡単な方法 行動経済学で「買いたい感情」を抑制する

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夫:「テレビの映りが少し悪くなってきたな」
妻:「そうね、でもあと2カ月でボーナスだから、それまで待ちましょうよ」
夫:「そうだな、壊れたわけじゃないし、もう少し待とうか」

 

といった具合に、大きな買いものはボーナスまで延期されることになるのが一般的です。逆に言えば、ボーナスで大きなものを買うのは、すでに出来上がったコンセンサスに基づく行動ですから、あまり大きな議論にはなりません。

ここで、ちょっと一工夫してみてください。ボーナスではいっさい買い物をしないで、全部銀行の定期預金にしてしまうのです。

「え! それは確かにおかねを使わないことにはなるけど、じゃあ大きな買い物はいつするの?」と思われるかもしれません。それは、それまで預けていた定期預金を解約するのです。ちょうど満期が来ていなくてもかまいません。遠慮することなく解約すればいいのです。

もしそうした場合、どんな心理状況になるでしょう。それまで「ボーナスは大きな買い物をするもの」という常識とコンセンサスに従って、何の抵抗もなく使っていたものが、定期預金を解約するとなった途端に、大きなハードルになると思いませんか?

定期を解約してまで買う必要があるのか?

そうなのです。定期預金を解約するとなった途端に、「それって定期預金を解約してまで買う必要があるのだろうか?」という、新しい議論が生まれてくるのです。それまでは何の異論もなくボーナスを右から左へ動かして買っていたものが、急にブレーキがかかってしまうことになるはずです。

「そうか、新しく買おうかと思っていたけど、よく考えてみたら、まだ買い替えなくても使えないことはないよね。だったらもう少し様子を見よう」ということになる可能性が高いのではないでしょうか。そして本当にいよいよ使えなくなったり壊れたりしたら、その時点で定期預金を解約して買えばいいのです。壊れてしまって使えなくなれば、これはしょうがないですから。

「でも、実際に定期預金を解約して買うとなったら、途中解約になってしまうので、金利が下がって損でしょ?」それはそのとおりですが、今のような低金利の時代であれば、定期預金と普通預金の差はそれほど大きなものではありません。それよりも勢いと惰性での購入を抑えられることのほうが、経済的によほど大きな効果が得られるはずです。定期の満期にこだわる必要はまったくありません。

最悪の選択肢は「定期がまだ満期になっていないので、ローンで買おう」という方法です。支払う金利の大きさを考えたら、解約するほうがはるかに得です。

経済学的に見れば、ボーナスから買い物をしようが定期預金を解約して買い物しようが、どちらも自分のおかねを使うのですから、これは同じことです。ところが、心理的にはかなり大きな違いが生じてきます。

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