哲学塾が、より「時代錯誤な場」を目指す理由 哲学塾での「語学習得」は、なぜ効率的なのか

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哲学塾で学ぶ語学は、ほかと少し違うようです(写真:Masson / PIXTA)

本連載は今回でちょうど1年になります。すでに「哲学塾」に入り、受講している人も読んでくれていますが、そうでない人もいるはず。今回は、そういう人々に――たいへん遅まきながら――、この塾の外形(組織)についてお話しします。

哲学塾のホームページを見てくれればわかるように、本塾では、現在20科目を超える講義を開催しており、そのうち約半分を私が担当し、残りの半分を10人の非常勤講師が担当しています(私の担当科目は大体月2回開講、非常勤講師の科目は月1回開講です)。

単位も論文もない「哲学塾」

講義のレベルは、大体、有名大学哲学科の学部程度(ものによっては大学院レベル)と考えていいでしょう。例えばカントの『純粋理性批判』でしたら、現在の日本の哲学界において最高レベルの解釈をする。いかなる素人さんに対しても、けっしてダイジェスト版を与えることはありません。

ただし大学と違うのは、原文(ドイツ語)で読むことをしないこと。あくまでも定評ある翻訳を使います。それは、ドイツ語を学んでいない人もいるからですが、とくにややこしい箇所はドイツ語も提示して説明します。

他の先生方も大方そうであり、自分は原文にちらちら目をやりながら、指定の翻訳で購読を進めていく。並行して、補足的にプリントを配る人もいますし、アリストテレスの『二コマコス倫理学』の先生は、自分独自の翻訳を使っています。

そして、聴講生の義務は、そこに「いる」こと以外には、順に翻訳文を音読することくらいであり、ほかには何もない。宿題もなければ、試験もなく、単位もなければ、論文指導もなければ、卒業もない。ただ、来て、座っていて、帰るだけです。

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