「哲学は万人に必要」は、マヌケな幻想だ

ほとんどの人には、役に立たないどころか害

「みんなもっと哲学をしたら、社会はもっとよくなるのに」。そう考えている人に、中島先生が言いたいこととは?(写真:Graphs / PIXTA)

「哲学塾からこんにちは」をずっと連載してきましたが、考えてみると、このコラムを読まれている人々にとって(多分)最も関心のあるテーマをまだ扱っていませんでした。それは、自分は「哲学塾」に入ってもついていけるのかどうか、いや、そもそも入塾が許可されるのかどうか、という「根本的疑問」です。

というわけで、遅まきながら、今回から数回にわたって、「哲学塾」のホームページには載せていない事柄のうち、入塾希望者が抱いていると思われる「根本的疑問」を列挙してみます。

これまでも、この塾を開設するにあたっての動機や目的などを書いてはきましたが、まだ十分に伝わっていないようにも思います。というのも、本塾の「理念」は21世紀の日本における経営理念の常識とは大きくずれているからです。そのあたりから説明しましょう。

生きるうえで必要な知識など何も与えてくれない

まず強調したいことは、本塾の設立趣旨は、「とにかく多くの人に哲学を学んでほしい」というものとは限りなく遠いということ。哲学など学ばなくて生きていければ、それでいいのです。私はこれまで50年にわたって哲学に関わってきましたが、「哲学は万人にとって必要だ」と考えたことは一度もありません。

ですから、そうもっともらしく語る人をちらほら見かけますが、哲学とは何かまったく知らずに、いや知ろうとせずに、勝手に自分が思い描いている『哲学』という美名についてベラベラ喋っているだけなのだと思い、全身鳥肌が立ってくる。軽い殺意さえ覚えます。

哲学は、ほとんどの人にとって、まったく必要ない。生きるうえで必要な知識など何も与えてくれません。そこで「いや、すぐには役に立たなくても、人生やこの世界についての根本的な真理を明らかにしてくれるんではないですか?」としたり顔に答える輩は、本当に殺したくなる……というのはあくまで比喩的表現で、「バカモノ! マヌケ! アホ! シネ!」と叫びたくなります。しかし、きわめて紳士的な私(?)は、そう思うだけであって、叫ぶことはない(つまり、「心の中」で叫んでいるだけ)。

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