なぜ村上春樹は世界中の人々に「ささる」のか 村上作品の英訳者・ルービン氏、大いに語る
当初は村上作品に何の期待もしていなかった
――村上さんとの出会いは?
作品を知ってから四半世紀の付き合いになります。最初に出会ったのは1989年、『羊をめぐる冒険』がアルフレッド・バーンバウムの翻訳で、アメリカで話題になる少し前のことでした。
僕は村上さんの世界に入る前は、夏目漱石、芥川龍之介、国木田独歩など明治期の文学者を研究してきたのですが、特に漱石に見られるように心理の深いところにもぐりこみ、機微に触れる作家が好きでした。
1989年、『羊をめぐる冒険』の英訳が刊行される数か月前のこと、アメリカのヴィンテージという出版社から、村上さんのある長編作品が翻訳に値するか見てほしいとの依頼がありました。「世間でどんな駄作が読まれているかを知るのも、まあおもしろいだろう」と考え引き受けたのです。率直に言いますと、最初は何の期待もありませんでした。


















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