なぜ村上春樹は世界中の人々に「ささる」のか 村上作品の英訳者・ルービン氏、大いに語る

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もっと言えば、村上さんを知らずにいたら、今とは異なる頭脳構造を持っていただろうとさえ言ってよいと思います。もちろん仕事もまったく違うものになっていたでしょう。

村上さんを翻訳したおかげで、新しい経験を持つことができました。

ノーベル賞受賞なら村上氏と読者の頭脳が直接つながる

――村上さんがノーベル賞を取ったら贈りたい言葉はありますか。

実は、10年以上前に朝日新聞のためにエッセイを書いたことがあります。結局、そのままどこかで埃をかぶっているのでしょう。僕としてはなるべく早く村上さんにノーベル賞をとってほしい。シーズンになると毎年日本の新聞から、「もし村上さんが受賞したら?」というコメントの依頼も来ますしね。

もし実際にとられたら、僕は心からほっとするでしょう。というのも、毎年恒例のように、世界中が大騒ぎになることは村上さんにとって気の毒ですからね。ご本人はクールな態度をとりつづけていますが――。

それに現実の問題として、日本の作家として可能性がある作家は村上さんのほかにはたぶんいないでしょう。世界中の人に読まれていて、世界中の人々の心の中のことを書ける希有な作家ですから。受賞すべきだろうと思います。もちろん受賞したら、「おめでとうございます」と言いたいですね。

――村上さんを通して世界の相互理解が進む面もあります。

もちろんファンの人々が互いに理解し合う喜びもあります。僕には直接的に村上さんの頭脳と読者の頭脳がつながる「文学的なインパクト」の方を重視したい。

つながるのは読者対読者というよりも、村上さんと読者です。横につながっているというよりも、縦につながっているように見えます。

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