なぜ村上春樹は世界中の人々に「ささる」のか 村上作品の英訳者・ルービン氏、大いに語る

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しかし、村上さんからすれば、そんなふうに定義すると、本来の言葉のパワーが失われてしまう。火山はただの火山としてその他の説明をいっさいしないのです。結果として読者一人ひとりの心中で純度の高いイメージが出来上がるのです。国、宗教、政治的立場にかかわりなく、同じイメージとして読者の心に飛び込むのです。

――海外の読者も、日本人と同じように感じているのでしょうか。

僕はたくさんの読者からメールや手紙を頂戴しています。もちろん大半は僕の英訳を読んだ読者で、日本人でない人たちです。必ず書かれているのが、やはり「私のためにだけ書いてくれた」という一文です。実は僕自身も同じように感じてきました。「なぜ村上さんの作品は、僕たちの心の深いところにあるものをそんなにはっきりと描くことができるのだろう。わかってくれるのだろうか」と。 

やはり理由は分かりませんね。イメージのシンプルさ、鮮やかさ、そして意外性もある。先ほどの「海底火山」がそうですが、村上さんに直接的に聞いても、本人さえ海底火山がどこから出たのかはわかっていないのですから、他の人がわかるはずがない。

よい文学とは、日常生活に響くもの

――ルービンさんが村上作品から学んだ最大のものは何でしょうか。

その問いは、僕にとっては「よい文学とは何か」という問いに置き換えられると思います。よい文学とは、僕に言わせれば、日常生活に響くものです。ごく当たり前の日常生活―――買い物をしていても、車を運転していても、料理をしていても――何をしていても、ふと微妙な関係で瞬間的に頭をよぎるものです。すべての生活に関わりを持っている。

村上さんの作品は、僕のいう「よい文学」の条件をパーフェクトに満たしています。とはいっても、僕が村上さんから具体的に何か教訓のようなものを得たか、それはよくわかりません。

ただ、はっきり言えるのは、もし僕が村上春樹という作家を知らずにいたら、まったく違う人生を送っていただろうし、このインタビューを受けることもなかっただろうということです。

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