哲学塾が、より「時代錯誤な場」を目指す理由 哲学塾での「語学習得」は、なぜ効率的なのか

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しかも、ある講義に1度出てみたけれど、つまらなければ、それきりその講義は取らなくていい。そのことを予期しているので、受講料は現に出た講義の分しか払わなくて結構です。そして、また興味が湧けば出ればいい。つまり、受講に関しては、何の規則も拘束もないのであって、月に30科目以上取っている人もいる半面、1科目だけという人も相当います。

なぜ、こうするのか? それは、哲学のテーマはきわめて多様にわたるのであって、何がその人の興味をひくのかは、本人しか(場合によっては、本人も?)わからないからであり、興味がないテーマを強制的に聞かされてもまったく効果はなく、時間の無駄以外の何ものでもないからです。

しかし、塾生にとってはプラスになるこの制度は、10人の非常勤講師にとっては、結構厳しく、ただ講義が各人にとって魅力的か否かだけであるという純粋な「自由市場」なので、ある先生の講義には20人集まっても、ほかの先生の講義には5~6人しか集まらないこともある。あるいは、ちょっと気を抜くと20人がみるみるうちに10人に激減することもある。

しかも、塾生が講義を中止する理由やタイミングはわからないのですから、次の講義には何人いるのか……と考えて、先生方は教室のドアを開けるまで不安に駆られるようです。

また、聴講生の多くは私の本を読んでくるので、私の講義には、いつも聴講者は15~25人いるのですが、それに反して、ほとんどの塾生は(一部の先生を除いて)とくに「この」先生を求めているわけではないので、「合わなければ」すぐにいなくなる、という不安定な状況にあるのです。

語学教育の「惨状」を知って編み出した教育法

ここまでは「序」であって、毎回あるテーマを取り上げて本塾の特徴を紹介していきますが、今回は、語学教育に関して、本塾は奇跡的な成果をあげているということを紹介しておきましょう。私は長く大学でドイツ語教師をしてきたので、わが国の大学の語学教育の「惨状」を体感的に知っているのですが、それを反面教師にして語学教育法を開発しました。その結果、ここはたぶんわが国で最も能率的にかつ安価で(哲学書を読むのに必要な)外国語を学べるところだと自負しています。

開講しているのは、ドイツ語、フランス語、ラテン語、ギリシャ語ですが、開講期間は不定期であり、希望者が10人ほど集まる感触を得たら、そのつど開講しています。

第1の特徴はその集中性であり、ドイツ語(初級)は、私が教えていますが、10回(1カ月くらい)ですべての基本文法を終え、その後すぐに(独和辞典だけで)二ーチェが読めるようになります。ただし、基本文法を教えるだけですから、曜日の名前、色の名前も知らないかもしれない。でも、そんなのは辞書を調べればすぐにわかるから、わざわざ教室で学ばなくてもいいのです。

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