日本が世界に劣る「中高教育に潜む弱点」 30~40代の親は「逃げ切れない」と認識せよ

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山内:そうです。逆に言うと、中学・高校の学校教育には改善の余地があるということです。特に高校では顕著ですが、教員が概念を解説して、正答を見つけるだけで終わってしまう授業が多いのです。

もちろんこういったやり方にもメリットはあります。例えば日本の大学受験時の数学のレベルというのは国際的にもかなり高い水準にあります。受験学力というか、正答のある問題解決能力に限って言えば日本は世界トップクラスです。

その代償として、授業中にディスカッションを行うことはほとんどありません。そのため大学生になって海外に留学し、自分のコミュニティの外に出て行ってしまうと何を話していいかわからないという状況になってしまうのです。

加藤:英語に関して言えば、読めるし書けるけど、口頭でのコミュニケーションができないケースをよく見ます。集団生活をしていながら、自己表現のスキルを学校教育で育成するのは難しいのでしょうか?

山内:大学受験制度の中で、創造性や答えのない課題に取り組む力のような21世紀型スキルを養うにはどうすればいいのか。中学・高校の教員や大学関係者は真剣に検討すべき時期に入っているといえるでしょう。また小学校も含めた全体的なことですが、教員の国際的な経験や機会が非常に少なく、海外の教員との交流がないことも、日本の現在の教育体制を変えていく上でのアキレス腱になっています。他の国の改革状況が見えにくくなりますので。

中学・高校にある問題を解決するには

加藤:では、中学校や高校の教育現場が抱える問題を解決するにはどうすればよいのでしょうか?

山内:根本的に解決しようとすれば、教育目標を再定義し、授業の方法を変えていく必要があります。最近文部科学省は中学校・高等学校へのアクティブラーニングの導入を言い始めていますが、これが端緒になるでしょう。ただし、これまでのやり方を変えることになるので、普及には時間がかかると思います。

もし、読者のみなさんが、今すでにお子さんをお持ちであり、そんなに待てないということであれば、夏休みなどに大学やNPOが展開する問題解決やディスカッションを含む学習プログラムに参加することも考えてみてはいかがでしょうか。多言語コミュニケーション能力に関しては、高校生でももっと留学という選択肢が検討されてもよいのではないかと思います。

日本の教育の強いところは活用し、足りないところを親子が相談しながら戦略的に補っていく。そういった視点を持つことを提案したいです。

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