山内:そうなんです。ただ、前述のとおり、ハードの導入にかかるコストの問題だけでなく、21世紀型のスキルを養成できるように学校というシステムそのものを変えなければいけないという問題と直面することになります。
たとえば、21世紀型スキルの目標の中でも“問題解決”や“批判的思考”の重要性は従来から議論されていたものです。PISA(Programme for International Student Assessment: OECD生徒の学習到達度調査)でも評価されていて、現在の教育目標とか制度とも比較的親和性が高い部分だといえます。
しかし、創造性やチームメイト同士での“コラボレーション”、“地域と国際社会での市民性”のような項目は、現在の学習目標ではほとんどとりあげられていません。
だから、そういうものを育てるためには、学習指導要領から変えない限りは厳しいでしょう。また、教員が高度な授業内容に集中できるよう、過重労働の問題を含む組織的・制度的な側面を変えていく必要があり、時間がかかります。そもそも日本の場合には、学習指導要領の改訂自体が10年に1回ぐらいしかされないですから。
日本の小学校教育はレベルが高い。問題は…?
加藤:社会の進化スピードが速くなれば、時代が必要とするスキルに公教育が対応するスピードも、その分速さが求められるように思います。しかし、学習指導要領が10年に1回しか改訂されないのでは、なかなか難しいように見えます。実際の教育現場の状況はどうなのでしょう?
山内:日本の学校教育は一律によく批判をされがちなのですが、小学校は比較的ディスカッションを取り入れた協調学習型の授業が多く、国際的にも結構評価が高いのです。あまり、知られてないことなんですが。
加藤:それは意外ですね。
山内:教員の授業スキルも相対的に高いです。日本の教育は「授業研究」という教員が相互に授業を見学して議論するという文化があるのですが、この言葉がアメリカでとりいれられているぐらいです。
確かに、海外の学校と提携して何かを一緒にやるような小学校は数が少なく、21世紀型スキルで言うところの多言語・多文化視点での教育にはまだまだ課題があります。情報リテラシーに関する教育も十分とは言えません。しかし、考えさせたり問題を解決したりする力に関しては、世界的にそう悪い状況にはないと認識をしています。
加藤:設備的・制度的に後れをとっても、小学校では教師スキルの高さで社会に順応しているということでしょうか?
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