いま最重要視される「問いを立てる力」「批判的思考」。世界のビジネスパーソンが熱い視線を送り、巨額が動く現代美術のリアル事情

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たとえば、東京都現代美術館で2025年の夏、大規模な展覧会を開催した岡﨑乾二郎さんという造形作家をご紹介したいと思います。

私たちも変えていけるのだ

彼の彫刻や絵画作品は「抽象」で、一見して何を表しているのだろう?と考える方も多いと思います。

岡﨑さんの作品は「造形」という言葉の本来の意味を考えさせてくれるものです。造形を英語にすると「プラスチック」、これは「可塑性(かそせい)」、つまり「変わりうるもの」「柔らかく形を変えられるもの」という意味も持っています。

粘土が、素材の硬さやそこにかかる力などの物理的な条件によって形を変え、複数の力がぶつかり合って互いにある形をとる。これを、私たちの世界のあり方、成り立ちの1つのモデルとして見ることができるのではないでしょうか。

人間社会もまた、固定されたものではなく、異なる他者とぶつかり合い、影響を受け合いながら、常に形を変えていく「可塑的」なものであるはず。なのに、その柔らかさを失い、凝り固まってしまったときに、対立や分断が生まれます。

岡﨑さんは「造形」の方法を、実際の社会の中に「代入」する活動もしています。

たとえば90年半ばから現在まで続く取り組みとして、広島県の灰塚で、ダムの建設によって分断された地域コミュニティを、アートの力によって再生させるアート・プロジェクトを行っています。

まず、公園や橋などの公共的なデザインを芸術家たちが行うだけでなく、ワークショップなどを通してアートの思考を伝える。そして、最終的に住民の方々が中心となって、その地域の自治体を集めて環境問題に対する提言を発出するにいたりました。

場所だけでなく、人々の思考や行動も「造形」されたといえる例だと思います。

アートを通して、人々は自分たちの社会が「変えていけるもの(可塑的なもの)」であるという感覚を得たといえるでしょう

こうして見ていくと、歴史、政治、経済、環境、テクノロジー――現代美術の作家たちは、あらゆる分野を横断的にリサーチし、それらを作品という形に統合しています。これはまさに、ルネサンス期のレオナルド・ダ・ヴィンチが実践していたような「リベラルアーツ(自由学芸)」の考えにつながるものです

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