いま最重要視される「問いを立てる力」「批判的思考」。世界のビジネスパーソンが熱い視線を送り、巨額が動く現代美術のリアル事情

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彼の代表作の1つ『MoMA投票』(1970年)は、美術館を訪れた観客にアンケート投票をさせるという作品です。

単なる「美的な楽しみ」じゃない

質問内容は、当時のニューヨーク州知事であり、知事選に出馬していたネルソン・ロックフェラーが、当時のニクソン大統領のベトナム戦争も含むインドシナ政策に対して肯定的態度をとっていることの是非を問うものでした。

一見ただのアンケートですが、ロックフェラー家はMoMAの創設者の1人であり強力な支援者であること、このネルソンが理事でもあったことをつけ加えれば、ハーケの意図は明らかになるでしょう。

彼は美術館という「政治的に中立であるべき(とされる)」場所に、あえてスポンサーの政治的立場を問う行為を持ち込んだのです。

これによって、美術館という芸術の殿堂が、政治と資本の力と密接に結びついて成り立っているという「不都合な真実」を可視化しました。

ハーケはその後も、美術館の理事たちが関わる不動産ビジネスの不正を暴く作品などを発表し、展覧会がキャンセルされたり、キュレーターや館長が解雇されたりという事態を引きおこしています。

彼は「意地悪」をしているわけではありません。私たちがどんな大きな構造やシステムの中にいるかを、アートという手段を通して目に見える形にしているのです。

同時に重要なのは、彼が、「美術館は汚れているから必要ない」と言っているわけではないということです。自分たちもそのシステムの一部なのだということを自覚したうえで、彼は、ではよりよい制度、よりよい社会はどのように実現可能だろうか、という思考の始まりへと私たちを導いているのです。

このように、現代美術は単なる美的な楽しみであることを超えて、社会、さらには私たちの世界がどのように成り立っているかを考える問いを与えるものになります。

ハンス・ハーケはコンセプチュアル・アートと呼ばれる、調査資料や写真など自由な形式で提示される実践を行いましたが、よりなじみのある絵画や彫刻でも、同じことを言うことができます。

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