ソニーから独立して11年、VAIOが法人PC市場で市場平均を上回る成長を遂げた理由。安曇野工場に集約された競争力の源泉

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CO2排出量は新品の製造と比べて約6割削減できるという。環境への配慮を重視する企業からの引き合いも増えている。

「壊れないから、また発注いただける」

VAIOの法人ビジネスが好調な理由について、設計責任者の林氏は「品質が良くて壊れないから、また発注いただける」と説明する。

法人向けパソコンは、個人向けとは求められる品質のレベルが異なる。個人なら週末だけ使う、1〜2年で買い替えるといったケースも多いが、法人は3〜4年間、毎日同じペースで使い続ける。長期間の信頼性が求められるのだ。

「VAIOの里」の石碑
VAIO本社敷地内にある「VAIOの里」の石碑(写真:筆者撮影)

独立当初、VAIOは個人向けに開発した製品を法人向けに転用していた。しかし、1年目以降に長期使用に起因する不良が発生し、法人向けには別次元の品質基準が必要だと痛感したという。以来、独自の試験項目を増やし続け、「注意書きに逃げない設計」を追求してきた。

工場見学を終えて感じたのは、VAIOの競争力は特定の技術や製品にあるのではなく、全部門が同一拠点に集まることで可能になる「仕組み」にあるということだ。製造、キッティング、修理、品質保証、設計——このサイクルを高速で回し続けることが、「作るほど品質が良くなる」状態を生み出している。

25年にノジマグループの傘下に入ったことも、変化を後押ししている。糸岡社長は「親会社からのバックアップを受けられるようになり、スピードを上げてチャレンジできる」と話す。ノジマは関東を中心に約240の家電量販店を展開しており、法人中心だったVAIOが個人向け市場での存在感を高める足がかりにもなる。

糸岡社長は就任の所信表明で「この安曇野の地から、日本の製造業を再び輝かせたい」と語った。北アルプスを望む工場で、その言葉は単なるスローガンではないことを実感した。

石井 徹 モバイル・ITライター

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いしい とおる / Toru Ishii

1990年生まれ。神奈川県出身。専修大学法学部卒業。携帯電話専門媒体で記者としてのキャリアをスタート。フリーランス転身後、スマートフォン、AI、自動運転など最新テクノロジーの動向を幅広く取材している。Xアカウント:@ishiit_aroka

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