ソニーから独立して11年、VAIOが法人PC市場で市場平均を上回る成長を遂げた理由。安曇野工場に集約された競争力の源泉
製造過程は部品のピッキングに至るまでシステム化されている。作業者が製造過程のパソコンに貼られたバーコードを読み取ると、該当する部品の棚のLEDが点灯する。型番を目視で探すのではなく、システムが正しい部品を指示することでミスを防ぐ仕組みだ。
組み立ての各工程では画像検査が実施される。部品の有無、位置、種類をカメラで自動チェックし、問題があれば次工程に進めない。工場内には約300台のカメラが設置されており、ライブ映像と録画の両方が活用されている。何か問題が発生した際、過去の映像を検索して原因を特定できる。
検査工程で印象に残ったのは、作業者の認定制度だ。液晶パネルの不具合を目視で検出する検査員は、毎朝10問のテストに全問正解しなければその日の作業に入れない。体調によって判断力が低下するリスクを排除するためだという。記者も実際にテストを体験したが、4Kパネルの微細な不具合を見つけるのは容易ではなかった。
出荷直前には「FCC(Final Complete Check)」と呼ばれる最終検査がある。キーボード全キーの押下荷重を測定し、ファンの音を録音し、外観をロボットで撮影して記録する。顧客から「届いた時点で不具合があった」と言われた際、出荷時の状態を証明できる仕組みだ。
製造から修理まで「同じ建屋」で完結
製造ラインと同じ建屋内には、キッティングルームも設けられている。キッティングとは、IPアドレスの設定やメールのセットアップ、業務アプリケーションのインストールといった導入作業のことだ。
VAIOでは製造拠点でキッティングまで対応できるため、外部業者に委託する場合と比べて物流が1回減り、納期を大幅に短縮できる。「3月末にギリギリで注文が来ても、4月の新入社員に間に合わせられる」とキッティング担当者は話す。
修理後の再キッティングも強みだ。VAIOではキッティング時の履歴をすべて保存しており、修理が終われば元の設定状態に復元して返却できる。情シス担当者が再設定する手間がなくなる。


















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