カタログ販売の手法を考案し、工場の生産ラインに用いる多種多様な部品を標準化してきたミスミグループ本社(ミスミG)。一方、複雑な形状の特注品に対応できず、顧客には不便さが残った。これを解消するために開発したAI(人工知能)調達サービスが、モノ作りの現場に革命を起こしている。

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(1から続く)部品の設計データを専用ウェブサイトへアップロードすると、AIが見積もりを即座に算出する。さらに自動で製造プログラムを生成し、最短1日で出荷――。
2016年に始まったミスミGの調達サービス「meviy(メビー)」は、カタログに載っていないオーダーメード品でも「確実・短納期」を実現した。圧倒的な速さが評価され、国内外の工場で着実に浸透しつつある。
一品一様の部品を入手する手順は、従来こうだった。パソコンで3Dデータを設計し、それを紙の図面に落とし込み、加工業者へFAXで依頼。ミスミGによると作図の手間や待ち時間を含めて、1500点の調達に約1000時間を要したという。だがメビーを使えば92%も短縮できる。
世の中に存在しない特注品でも、注文後すぐに出荷してくれる。メビーは製造業に携わる人々にとって、まるで「ドラえもんの四次元ポケット」のような存在かもしれない。AIを活用した先鋭的なアイデアと思いきや、実は同様の構想は約40年前から社内に存在していた。技術の進化によって、ついに具現化したのだ。
時代を先取りしすぎた「先祖」
ミスミGには1980年代に「シースリー」という商品があった。金型部品の設計図を送信すると価格や納期が表示され、その場で発注できるシステムだ。価格はモニターなどの機器と専用ソフトウェアのセットで895万円。まだインターネットは普及しておらず、ダイヤルアップ接続でデータをやり取りしていた。

「特注品の調達にかかる労力を減らしたい、との思いはこの頃からあった」。そう語るのは当時、名古屋で営業を担当した大野龍隆社長だ。カタログ販売の範囲を超えて、ミスミGのカバー領域を広げる狙いがあった。
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