ソニーから独立して11年、VAIOが法人PC市場で市場平均を上回る成長を遂げた理由。安曇野工場に集約された競争力の源泉
「市場で起きた不良を再現する試験を開発し、それに耐える設計をする。だから試験項目は増え続けている」と担当者は語る。この「高速フィードバックループ」と呼ばれる仕組みが、糸岡社長の言う「作れば作るほど品質が良くなる」状態を生み出している。
9万9800円の「Reborn VAIO」
25年8月、VAIOは法人向けに「Reborn VAIO」の本格展開を開始した。リース会社から買い取った使用済みパソコンを整備し、再販売する事業だ。価格は9万9800円。経費で購入できる10万円以下に設定した。
一般的な中古パソコンとの違いは、部品交換の徹底にある。天板、液晶ベゼル、パームレスト(キーボードを含む)はすべて新品に交換する。バッテリーも新品だ。外観で使用感が出やすい部分を一新することで、「新品同様」の状態を実現している。
シリアル番号も新たに取得し直す。法人パソコンはMicrosoftの端末管理機能「オートパイロット」にシリアル番号が登録されていることが多い。そのまま再販すると前の所有者のシステムに誤って接続してしまう可能性があるため、シリアル番号を刷新してまったく新しいデバイスとして利用できるようにしている。
メーカー保証も1年間つく。「3〜4年使われた商品を再生して1年保証をつけるのは、品質に自信がないとできない」とReborn VAIO事業を統括する花村英樹氏は話す。新品と同じ検査基準で40項目以上の動作確認を行い、合格したものだけを出荷している。
Reborn VAIOの調達先は、主に大手リース会社だ。メーカーであるVAIOは過去の販売データを保有しているため、どの会社にどのスペックのPCを何台納入したかが分かる。リースアップの時期を見計らって買い取りに行けるのは、メーカーならではの強みだ。
将来的には「エコシステム」の構築を目指している。新品販売時に買取価格を約束し、リースアップ後にVAIOが買い取る。整備してReborn VAIOとして再販売し、役目を終えたPCは資源リサイクルに回す。新品販売から廃棄までを一つの輪でつなぎ、廃棄ゼロを目指す構想だ。


















無料会員登録はこちら
ログインはこちら