通常、長期間住んでいない家の片付けであれば、不用品をすべて処分して空室にするのが一般的だ。しかし、彼女はそれを拒んだ。あくまで「ここで普通に暮らしている」という体裁を保ちたかったのだ。
「全部処分してガランとしてしまったら、逆に『ここに住んでいない』ことがバレてしまいます。親に心配をかけたくない、怒られたくないという思いから、ゴミや汚れのひどい布団は処分しつつも、家具や一部の日用品はあえて残すことになりました」(二見氏、以下同)
ゴミ屋敷になってからまだ日が浅かったのか、幸い、畳やフローリングは、クリーニングやリフォームが必要なほどのダメージはなかった。
「2階」を使っていなかった理由
この家には女性が1人で暮らしていたはずなのに、2階と1階のそれぞれに寝床があった。
2階の寝床は比較的綺麗で、ゴミも少ない。しかし、現在の生活拠点は完全に1階のリビングに移っていた。なぜ、綺麗な2階があるのに、わざわざゴミだらけの1階で寝起きしていたのか。
「最初は2階で寝ていたはずです。でも、だんだん『面倒くさい』が勝ってしまったんでしょう。トイレ、風呂、洗面所。水回りはすべて1階にある。食事も1階でする。そうなると、寝るためだけに2階へ上がるという行為が、億劫になってしまうんです」
特に1人暮らしで誰の目もない環境では、生活動線は限りなく短縮されていく。



















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