足の踏み場もない廊下を慎重に進み、リビングへと足を踏み入れる。
リビングの中央にはローテーブルが置かれている。その周囲は食べカスや生ゴミで埋め尽くされているが、テーブルの上だけは特定のアイテムが並べられている。使いかけのつけまつげ、カラーコンタクトの保存液、高級ブランドのハンドクリーム、美容器具など。
そのすぐ横には、茶色く変色した布団が敷きっぱなしになっていた。
この現場を片付けたゴミ屋敷清掃業者「イーブイ」の二見文直氏は、部屋の状況を見て、住人の生活を想像する。
「僕たちは部屋の中を見れば依頼者がどういう生活をされていたのか、どこが生活のメインだったのかがすぐに目に浮かびます。布団の上に座り、その場から一歩も動かずにカップ麺をすする。食べ終わればゴミを脇へ放り投げ、そのまま鏡に向かって入念にメイクを施す。そして、仕事へと出かけていたのでしょう」
「いつか親にバレる」という恐怖
今回の依頼主は、この家に住んでいる20代前半の女性だ。 ここは実家だが、家庭の事情により、現在は両親が住んでいない。
1人でこの家に暮らしていることになってはいたが、水商売系の仕事をしている彼女は、実際には北海道などの地方へ「出稼ぎ」に行っている期間が長く、ここは実質的に「物置」または「たまに帰ってくる寝床」になっていた。
片付けを依頼したきっかけは、「今の状態を親に見られたら大変なことになる」という不安からだった。それが限界に達し、パニックに陥りながら彼女はイーブイへ相談の連絡を入れた。
「部屋を空っぽにするのではなく、生活感を残してほしい」



















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