「駅前には巨大なウルトラマン像」「ドトールには敵わないからスナックに」…新宿駅から21分なのに《個人店だらけ》な街の"実態"

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「ここは今年で38年目なんですけど、最初の1年くらいは喫茶店だったんですよ。でもね、ドトールさんとかができてねぇ、うちは珈琲一杯350円で出してたんだけど、ドトールは150円。こりゃ敵わないなって思って、スナックに衣替えしたんです」(伊藤さん)

既述の通り、祖師ヶ谷大蔵は円谷プロダクションの本部があった土地だ。他にも東宝の撮影所などもあり、映画、芸能の街でもあった。

東宝さんや円谷さんに支えてもらった

「オープンからしばらくは東宝さんや円谷さんに支えてもらった感じね。当時はカメラマンで映画監督でもある木村大作さんとか、映画界の錚々たる人たちが毎日のように来てくれていました」(伊藤さん)

円谷英二の孫で俳優の円谷浩が、短い間だが若い頃にバーテンダーとして店に出ていたこともあるという。ここで名前を出すことはできないが、今でも映画やドラマで活躍する俳優が足繁く飲みに来る。

スナックの軽食
酒が呑めないので、いつものように烏龍茶(筆者撮影)
伊藤ママ
老眼鏡なしで会計の計算をテキパキとこなす伊藤ママ(筆者撮影)

「この街のいいところは、庶民派なところね。お隣の成城学園はちょっとハイソでしょ。成城石井みたいなお高めの店はあるけど、庶民派には逆に不便だったりもするんですよ。あと、あちらにはうちみたいなスナックも少ない。だからわざわざ祖師ヶ谷大蔵に来てくれる人も多いんですね」(伊藤さん)

昼は買い物や飲食、夜はスナックを含む小規模店舗が利用される。生活者の行動パターンが複数の業態を支え、その結果として商店街の持続性が保たれている。祖師ヶ谷大蔵はそんな街だ。新宿との距離、商店街の規模、店舗の密度。いずれも極端ではなく、生活圏としてのバランスが取れているように思う。そんな「ちょうどいい感じ」が祖師ヶ谷大蔵の住むとちょっといいところだ。

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末並 俊司 ライター

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すえなみ・しゅんじ / Shunji Suenami

福岡県生まれ。93年日本大学芸術学部を卒業後、テレビ番組制作会社に所属。09年からライターとして活動開始。両親の自宅介護をキッカケに介護職員初任者研修(旧ヘルパー2級)修了。現在、『週刊ポスト』を中心として取材・執筆を行っている。

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