「駅前には巨大なウルトラマン像」「ドトールには敵わないからスナックに」…新宿駅から21分なのに《個人店だらけ》な街の"実態"

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ウルトラマン商店街は3つの商店街が連携しているだけあって全長2.3kmとかなり長い。はじからはじまで歩くだけでくたびれてしまう。そろそろ休憩したいなと思いながら、駅の近くをうろうろしていると、気になる看板を見つけた。

「本と お酒と 珈琲と」

仕事柄、本をよく読むし珈琲も好きだ。こんな看板を見せられると入らずにはいられない。店は2階にあるようだ。階段を上って扉を開く。店内のいたるところに本が並べられている。私はべつだん読書が好きなわけではない。無人島に一冊だけ、みたいなくだらないことを問われれば「とくになし」と答える。仕事の必要として、資料として毎日大量の本に接しているだけだ。仕事場のデスクには本が積み重なり、その隙間でキーボードを叩いているようなかっこうだ。そんな生活を長年続けていると、いつの間にか本に囲まれているだけで安心できる体質になってしまった。

“本とお酒と珈琲と”店名の意味は?

窓際の椅子に座り、まずはとにかく珈琲を注文した。バッグから読みかけの本を取り出し、ページをめくっていると、大きめのカップにたっぷりのドリップコーヒーが到着した。手元に本と珈琲、背後の本棚にぎっしりの本。うん、安心安心。

店主の安田千寿子さんに話を聞いた。そもそも店の名前が気になる。看板にある通りそのまま店名なのだろうか。

「店名はそのままなんですよ、“本とお酒と珈琲と(世田谷区祖師谷3-4-8)”です」

安田さんはふふふと笑いながら答えてくれた。

「お店を始めたのは5年ほど前です。50代になって子育ても一息ついたタイミングで、物件を探し始めました。人生の終盤は何かお店をやってみたいと考えていたんですよね。いろいろと空きテナントを探し歩いて、たどり着いたのがこの街なんです」(安田さん)

店の形態は、ここを下見をした瞬間にひらめいたのだそうだ。

「2方向がガラス張りで明るい。2階だから外からの視線も気にならない。珈琲やお酒を飲みながらゆっくり読書ができるカフェしかない!って。もちろん読書が好きってこともあるんですけど、このひらめきは正解でした」(安田さん)

オープン当初は「やっぱり難しいのかな」と思うこともあったというが、常連のひとりが酔った勢いで発したひとことが流れを変えた。

「本の貸し棚を作ったらどう?って、常連さんのお気に入りの本とか、もちろん私のおすすめの本とかね。そのアイディアを実行したら、絶版になりそうな貴重な本を寄贈してくれる方なども現れたりして、それからは本を仲介に、自然とコミュニティが広がってくれました」(安田さん)

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