原始生命が地球で誕生したのが38億年前。たった1度の大きな跳躍から生まれた。この偶然がなかったら、人類は誕生していないかもしれない

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ソ連の生化学者アレクサンドル・オパーリンは化学進化説研究のパイオニアで、1936年の著書『生命の起源』で化学進化のメカニズムを説明している。

オパーリンによると、生命は単純な分子からはじまる。単純な分子が化学的なステップをへて複雑な化合物をつくり、この化合物は有機物に変化する。この有機物が組み立てられて、単純な物質代謝を行うことができる原始細胞になったという。

約600万年前に人類の祖先が誕生

このような説明はとても合理的で現実的に聞こえるけれど、実は問題点もある。

1つ目は、無機物から複雑な有機物が合成される可能性を示しているだけで、有機物から生命に発展することがどうして可能なのかは説明できないという点だ。

そして2つ目は、生命を物質的な現象とみなしているので、生命に関する議論があまりにも単純化されてしまったことだ。

僕たちが知りたいのは「どうやって複雑な無機物が複雑な有機物になったのか」ではなく、「複雑な有機物が、どうやって質的にまったくちがう生命体になるための大きな跳躍に成功したのか」だ。

生命発生のメカニズムに対する研究と、生命の意味に関する哲学的な議論はこれからもつづくだろう。

だけど、僕たちがこれらを解明することができるかどうかとは関係なく、原始地球のどこかで最初の生命が誕生したことだけは変わらない事実だ。

この神秘的な存在は38億年にわたって段階的に進化し、いまから約600万年前に人類の祖先を誕生させた。

チェ・ソンホ 作家

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ちぇ・そんほ / Chae Sungho

1981年生まれ。作家。成均館大学哲学科卒業。学生時代から文学、哲学、宗教、西洋美術、物理学など多様なジャンルに没頭。「チェ社長」名義で執筆した『全人類の教養大全』シリーズは2014年に刊行されるやいなやトリプルミリオンを達成。2015年には国内著者別売上トップを記録。以来、ベストセラーの座が揺るがない驚異の作品である。自身のポッドキャストは2億ダウンロードをゆうに超え、テレビなどのメディア出演多数。読者に望むことは、社会と人生のしくみを理解し、人とのコミュニケーションをよりよいものにしてもらうこと。

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