「生命の起源」その解明の鍵を握るものとは何か 分子の構成ばかりを研究しても謎は解けない

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人間の胎児の3Dイメージ
生命と何であり、どのように誕生したのかを解明したければ、生命の持つさまざまな側面のうち、既知の物理学や化学に還元できないものは何かを特定する必要があるようです(画像:unlim3d/PIXTA)
生命と非生命を分けるものは何か? 宇宙はどのようにして複雑な生命を生み出したのか? アリゾナ州立大学(ASU)ビヨンド科学基本概念センターの副所長で、アリゾナ州立大学(ASU)の教授であるサラ・イマリ・ウォーカー氏は、物理学と生物学の架け橋となるアセンブリ理論によって、生命とその起源を明かそうと試みている。今回、ウォーカー氏の著書で、2025年5月に日本語版が刊行された『誰も知らない生命』より、一部抜粋、編集の上、お届けする。

生命に関する「ハードプロブレム」

誰も知らない生命: アセンブリ理論が明かす生命とその起源
『誰も知らない生命』(書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら。楽天サイトの紙版はこちら、電子版はこちら

科学者も哲学者も等しく悩ませる3つの大問題、それは、物質の起源、生命の起源、心の起源である。

たいていの人は、難しい問題(ハードプロブレム)の中でも一番難しいのは意識の問題だと考えていて、その点では私も同意見だ。しかし意識的経験には、私たちが直接知覚できるという強みがある。

あなたも私も、意識を持っているとはどういうことかを(定義上)つねに経験している。しかし、生きているとはどういうことかを直接感じることはけっしてない。生命はほかのあらゆるものと同じく、私たちの意識的経験をすり抜けてしまうのだ。

生命のどのような特徴が普遍的であるかに関して、統一した見解はない。それどころか、生命は存在するか否かや、解くべき問題が存在するか否かに関してすら、幅広い同意には至っていない。

しかも、生命は存在しないと唱える人たちのあいだでも、自分たちは何が存在しないと訴えているのかに関して、意見は一致していない。生命という概念の定義はあまりにも心許ないのだ。

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