――結婚して、生活は変化されましたか?
何も変わりませんでした。東京に住んで相変わらず原稿に追われる生活でしたね。生活が大きく変化したのは、出産を経験してからです。
――出産は43歳のとき。今もですが、15年前に43歳で出産とはレアケースですよね。
幸運にも授かりました。不妊治療はしていなかったですし、稽留(けいりゅう)流産を2回していたので、まさか産めるとは思っていなくて。
――40代での妊婦生活については、『ヒゲの妊婦』という漫画も出しています。出産後は、どんなふうに生活や仕事が変化しましたか?
初めて「時間をコントロールする必要がある」と切実に感じました。それまでは、起きれる時間に起きて、気力と体力の限り描き続けて、気づいたら夜中……の繰り返し。でも、子どもがいたら、そうはいきません。何かと合わせなきゃならないし、夜は決まった時間に一緒にベッドに入ったほうがいい。
仕事の時間も朝9時から夕方6時までと決めて、その中でベストを尽くせるよう工夫するようになりました。「決めた時間でできるだけのことをやる」と割り切りました。最初は、それで良いものが描けるのか不安でしたが、やってみたら、集中力がすごく上がったんです。
――効率が良くなった?
夜型の頃よりも体はラクだし、頭もクリア。終業時間を決めたことで“ちゃんと1日を終わらせる”っていう意識も生まれて。そのおかげで家族との時間もできたし、プライベートもさらに大切にできるようになった。「仕事も家庭も気合い入れて頑張る」というよりは、“日常の中に、両方がある”という感じになりました。
淡々とやることが性に合ってるみたいです。昔は「完璧に仕上げねば」という意識が強かったけど、今は「とにかく続けること」が大事。毎日、少しでも積み重ねることで、結果として精度も上がるし、長く続けることもできるんだなと。
――無理せず、でも、続ける。ミドルエイジ以降は特に必要な意識かもしれせん。
“続ける”って、根性ではなく仕組みや習慣ですよね。ちゃんと時間を区切って、自分を追い詰めすぎずにやること。それが子育てのおかげで、身につけられてよかったなと思います。
東京を離れ“緩急”のある暮らしへ
――子育ての最中に城崎温泉(兵庫県)に移住されています。
2011年の震災をキッカケに、東京を離れようと思いました。20歳過ぎに上京して以降、東京に依存しているといっても過言ではないほど、遊んで、仕事することが大好きだったんですけど。ふと、「もう飽きたな」と。漫画をデジタル作画に変えたことも大きかったです。紙とペンで描いてたけど、今は、iPadがあればどこでも描けるから。



















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