「やせている=美しい」価値観が蔓延ーー。若い女性たちが陥る摂食障害の深刻、ネット上に危険なダイエット法が広がる

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鏡を見る女子高生
SNSなどで日々、流され続けている「やせている=美しい」という価値観。健康を顧みず、歪んだ価値観にとらわれてしまう若い女性たちが増えています(写真:mits / PIXTA)
「保護者が子どもの内面の問題を把握しにくい時代になっている」、そう語るのは学校での暴力、いじめ、自殺、障害、不登校、少年事件まで多くのことをテーマに多くの著作があるノンフィクション作家・石井光太氏です。
保護者世代の子ども時代に比べ、現代の子どもたちを取り巻く世界は大きく変化。「今学校で起きている校内暴力やいじめは、親世代の人たちが知っているそれとはまったく異なります」という石井氏は、事態を解決するためには
1:大人が子どもの周りで起きているリアルを知る
2:子どもがトラブルを起こすメカニズムを把握する
3:トラブルを起こす子どもに必要な対応を取る
のプロセスが重要だと強調します。「リアルを知る」ための一環として本記事では3回にわたって、石井氏の著書『傷つけ合う子どもたち』より一部を抜粋し、現代の子どもたちを取り巻く現状から3つのテーマを取り上げます。第3回は食生活において様々な問題が生じる「摂食障害」にフォーカスします。
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やせているのが私のアイデンティティ

取材で私が出会った12歳の女の子であるOさんの例を示しましょう。

両親は再婚同士で、Oさんは父親の実子、3歳年上の兄が母親の実子でした。もとは別々に育った子どもたちが、親の再婚によって兄妹の関係になったのです。

再婚当初、家族の関係はうまくいっていたそうですが、次第に親子間でしばしばいさかいが生じるようになりました。母親の連れ子である兄に発達障害があり、父親の方がその扱いに手を焼き、反抗期なども相まって毎日のように衝突するようになったのです。

兄の方も感情の抑制が効かず、体が大きかったこともあって歯向かうこともたびたびでした。暴力沙汰に発展するのも日常茶飯事で、時には警察や救急車が呼ばれたといいます。

そのせいでしょうか、母親はストレスを溜め込み、それを父親の連れ子であるOさんにぶつけるようになりました。テストで悪い点を取っただけで「脳みそ腐ってるんなら学校行かずに働けよ」と罵倒し、食事の最中に茶をこぼしただけで「障害あるんじゃない? 病院行ってきな」と言い放つほどだったそうです。

小5の秋から、Oさんは学校でも同級生にいじめられるようになりました。クラスのリーダー格の子とうまくいかなくなった途端に、周りから「陰キャ」「毛深い」「臭い」などと蔑まれだしたのです。

彼女は家庭でも学校でも冷たい言葉を浴びせられているうちに、自分がまったく価値のない人間だと考えるようになりました。

―私なんて生きている意味ないし。

それが口癖になっていたそうです。

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