近年の摂食障害のことで大人が覚えておかなければならないのは、今の子どもたちには、ネットを介して、歪んだ美的感覚や危険な情報に簡単にアクセスできてしまうリスクがある点です。
30年以上前にも若者の間で神経性やせ症が問題になったことがありました。この時はテレビに映し出されるやせたアイドルや、雑誌に掲載されるやせたモデルが美しいともてはやされていたことで、それに影響を受けた人たちが、間違った美意識を植えつけられたとされています。
そうしたこともあって、近年のモデル業界では過度な痩身を称賛することに対する、警戒の声が上がっています。しかし、今の若者の美的感覚に影響を与えるのは、アイドルやモデルというより、ネットの中のインフルエンサーです。
ご存じのように、ネットはテレビや雑誌の世界より、規制がかかりにくく無秩序です。少し検索していただければわかりますが、そこでは膨大な数の素人インフルエンサーたちが「やせている=美しい」という価値観を写真、動画、テキストなどあらゆる手段で拡散させています。
彼らは、自らのダイエット体験についてアップロードするだけでなく、チューブを喉に押し込んで嘔吐する方法や、糖尿病の治療薬をダイエットに応用する方法など、危険な手法を無責任に広めています。
「医療の専門家」を名乗りながら、たくさんの誤情報を拡散している人もいます。反社会組織が、ダイエットを謳って違法薬物を売ることもあります。年端もいかない子どもが、そうした情報に接して鵜呑みにしてしまうのは仕方のないことです。
特に前出のOさんのように自信がなく、何かにすがりたいと思っている子は、安易に飛びついてしまう。いったんそれに手を出してダイエットをはじめれば、あれよあれよという間に魔の手が伸びてきます。
ダイエットのプロセスや、やせた身体をSNSにアップした瞬間に、〈いいね〉がついて簡単に承認欲求が満たされる。そうなれば、やせたいという気持ちに拍車がかかっていき、自力で引き返すのは難しくなります。
摂食障害は〝もっとも死が近い精神疾患〞
摂食障害のリスクで知っておかなければならないのは、この病気は〝もっとも死が近い精神疾患〞と呼ばれていることです。摂食障害全国支援センターによれば、死亡率は約5%、他の研究によってはそれ以上あるとされています。
餓えや栄養失調から生じる様々な疾患によって死亡するだけでなく、自殺に至ることも少なくありません。決して、思春期特有の悩みとして片づけられる類のものではないのです。
神経性やせ症の子どもたちは、やせればやせるほど、自分が美しくなって人から認められると錯覚しています。大人がどれだけ危険性を指摘しても、間違っていることだと自覚できません。
摂食障害は、素人が対処するには限界があります。それゆえ、子どもがそうなっている可能性があると思ったら、できるだけ早く医療機関へつなぎ、専門家による診断を受ける必要があるのです。
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