教科書に載るほどガチの"シャッター街"の大変化 JINSの田中仁CEOが私財投じるなど民間主導で"衰退した地元"を再生中《前橋》

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「熱意と実行力のある街のキーパーソンを見定めて一人一人に声をかけ、その方々と11回に及ぶワークショップで意見を交わしながら骨格を決めていきました。顔ぶれは住民、建築や交通関連の事業者、店舗オーナー、教育関係者、学生など延べ200人。

策定にあたっては多様な意見を聞くのが大前提ですが、対象を広げすぎると角の丸まったどこの都市にもある計画になってしまう。ですから、思い切って的を絞ることにしたのです」(纐纈さん)

ポートランド視察(写真提供/前橋市)
アーバンデザイン策定に向けたワークショップの様子(写真提供/前橋市)

アーバンデザインの担い手として設立されたのが「MDC(前橋デザインコミッション)」です。民間の方が理事に名を連ねるこの組織は、取り組み全体を見渡しながら背中を押していく、いわば「まちづくりのエンジン」。民間主導という方針がここでも明確に示されたのです。

市民に変化する街を体感してもらい、関心を喚起

モデルプロジェクトを実行に移したのは、ビジョン制定からわずか4年後。この間にポートランド視察、アーバンデザインの策定、モデルプロジェクトの計画と進んだわけですからかなりのスピード感です。

とにかく走り出して、市民に変化する街を体感してもらうこと。そのほうが150ページに及ぶアーバンデザインの資料に目を通すよりも実感がわき、まちづくりへの関心を喚起しやすいと考えたのです。

「行政の施策の場合、計画をきっちり固めた上で実行に移すのが原則。その分、時間がかかり、融通が利かない一面もあるんですね。その点、MDCという民間団体が主体になることで動きは早く、課題が持ち上がったらその都度、柔軟に対応していけます。民間主導のまちづくりのメリットといえるでしょう」(纐纈さん)

実行されたモデルプロジェクトは3つ。なかでも2021年に始まった馬場川(ばばっかわ)通りの利活用はMDCが中心となり、200mの水路と歩車道の公共空間を民間資金により民間が再整備を図るという前例のないプロジェクトになりました。

「MDCでは一緒に企画・運営するメンバーを広く募集し、学生を中心に総勢100名を超える方々による準備委員会が立ち上げられました。水路と歩車道の所有者は前橋市になりますが、整備後10年間は商店街を含めた地元の人たちとMDCで『馬場川通りを良くする会』を組織し、イベントなどでの活用や管理までしていただく。

こうした取り組みによっても多様なまちづくりのプレーヤーが生まれています」(纐纈さん)

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