沖縄の東大合格者が少ないのは「所得水準が低いから」ではない? 東京出身には分からない、地方ならではの意外で複雑な"ワケ"

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ーーーえ?偏差値的にいえば20も離れているのに、ですか?

吉田さん「ええ。自分は大阪出身なので大阪と比較すると、例えば偏差値56の生徒であれば、偏差値58のA高校を目指しつつも、私立併願で『もしA高校に不合格になっても、A高校と同じくらいの私立高校に行けばいい』という発想になります。でも、そもそもそういう私立がないから、挑戦しづらいんですよね」

ーーー他の公立高校……例えば偏差値50のC高校を目指す、みたいなことはないんですか?

金城さん「もちろんいろんな偏差値の公立高校がありますが、シンプルな問題として、その高校に行くにも電車がない、だから通学ができない、ということがあるんですよ。親御さん世代も、高校に上がったら自分で通学しなさい、というのが基本なので。だから、偏差値上はかなり低い高校に通っている生徒でも、実際はかなり頭が良くて模試の結果はすごくいい、というような生徒さんも多いです。

また、沖縄県の高校受験はかなり内申点も加味されるので、純粋な学力で言えばかなり上位にいるはずの生徒が高校受験でなかなか評価されずに偏差値の低い高校に行く、ということが他の都道府県と比べてかなり多いと言えます」

県外に出てまでいい大学に行かなくていいという意識

ーーーそういう生徒さんは、高校の勉強以上に頑張って、大学受験でいい大学に行く、みたいなことはないんですか?

金城さん「もちろんそういう例もありますが、少ないです。周りの空気に流されて、あまり大学に行く意欲がなくなってしまう、というようなケースが多いですね。親御さんの価値観としても、県外に出てまで大学に行くという意欲が低い場合が多いので、『この高校に入ったんだったら、まあ、行くとしても県内の大学でいいよね』みたいな空気になります」

ーーーそうなると、高校受験がかなり逆転が許されないような状況ということで、中学受験で勉強するしかない、みたいな感じですね。


吉田さん「そうですね。でも、ここは個人的にちょっと問題だと思っていることがあって、沖縄県の中学入試の問題って、かなり独特なんですよ。全国の中学受験の問題と比較しても、難しさの質が全然違うんです。例えば、県内トップの県立開邦中学校の令和6年度の学校独自検査問題の算数の問題では、こんな問題が出ています」



県内トップの県立開邦中学校の令和6年度の学校独自検査問題の算数の問題
県内トップの県立開邦中学校の算数(画像:筆者提供)

吉田さん「これが第1問で、これと同じくらいの難易度の問題が全部で6問出題されます。そして、この問題の試験時間が、30分です」

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