沖縄の東大合格者が少ないのは「所得水準が低いから」ではない? 東京出身には分からない、地方ならではの意外で複雑な"ワケ"

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―――では、『所得水準が低いから教育格差につながっているのではないか』という指摘に対してはどのようにお考えですか?

金城さん「ずっと沖縄に住んでいて塾に携わっている自分としては、それは正しい面もあると思いつつ、本質を突いていないように感じます。というのも、意外と沖縄って塾文化なんですよ。令和6年度全国学力・学習状況調査によると、沖縄県の小6通塾率は37.5%、中3通塾率は48.4%です。これは実は、九州地方の中だと福岡県に次いで高い数字であり、47都道府県の中で大体真ん中くらいの水準になっています」


「所得水準の低さが要因」は本質を突いていない

ーーーえ?それはとても意外です。なぜそんなに通塾率が高いのでしょう?


吉田さん「理由の一つとして考えられるのが、共働きの世帯が多いから、というものです。沖縄県は共働きの世帯が多く、子供を預ける感覚で塾を利用している人が多いです。所得水準が低いといっても、共働きであれば世帯年収的には余裕が少しありますから、塾に子供を預けるケースが多いんです」



ーーー中学受験や高校受験はどうですか?他の都道府県と比べて違いがあるのでしょうか。

吉田さん「これは中学受験と高校受験で、かなり違いがあります。これも結構意外に思われる方が多いと思うのですが、沖縄県は中学受験をする人の割合がかなり増えているんですよ。16年から、開邦高校や球陽高校に中学校が作られ、公立の中高一貫校が増えています。私立も昭和薬科大学附属中学が作られており、ここは東大合格者も毎年数名輩出し、医学部の合格者が多い中高です」

学習受験社ガゼットの吉田社長
意外にも沖縄では中学受験をする人の割合が増えているという(写真:筆者撮影)

ーーー沖縄の中学受験事情は知りませんでしたが、そういう状況なんですね。

金城さん「一方で、高校受験の方は、自分達の肌感覚としては他の地方に比べてかなり熱が低いと感じます。というのも、そもそも沖縄県は私立の高校が少ないため、『私立併願』という概念がほとんどないんですよ。公立の1回ぽっきりの高校受験でしかないんです」

吉田さん「かなり簡略化して具体例で説明をしますと、仮に生徒の学力が偏差値 56 程度だとします。A 高校(偏差値 58)とB高校(偏差値 35)が近隣にあった場合どういう高校受験になるのかというと、A 高校(偏差値 58)を目指すが、不合格の際に、私立併願の概念が一般的でないので、偏差値が似たような私立ではなく、定員が空いている近隣のB高校(偏差値 35)に無試験(学校先生との相談)で入学する場合が多いんですよ。その中で、『だったら頑張ってA 高校を目指さなくてもいいかな』と途中で諦めてしまう人も少なくありません」

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