SNSの「強烈な快感」に支配される現代人、脳科学者が教える"新しい感情労働"の実態

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
(写真:buritora/PIXTA)
SNSで「いいね」がつくと嬉しくなり、もっと注目を集めたいという欲求が強まる──それは、脳内で報酬系が働いているからだ。承認欲求の中毒性が、やがて他人の評価を得ること自体を目的化させ、自己表現の軸を失わせる。脳科学の視点から、なぜ私たちは他者の注目を求め続けるのかを読み解きつつ、恩蔵絢子氏は、今求められるのは「人に合わせること」ではなく「人を理解すること」であるという。「NHKスペシャル」ほかで注目の脳科学者の最新刊『感情労働の未来』より、一部を抜粋・改稿して紹介します。

「いいね」には中毒性がある

注意が限られた資源だからこそ、私たちはそれを奪い合うことに必死になる。

SNSの投稿で「いいね」が一度つくと、もっと「いいね」が欲しくなってしまう。知らない人に自分の言いたいことが伝わること、他者が自分を認めてくれることは、実生活ではめったになく、それが起こると私たちはとてもうれしくなる。脳の中では、報酬系の神経伝達物質ドーパミンが放出され、強化学習の回路が回る。人間や動物は、ドーパミンが出ると、その前にやっていた行動をもっとやりたくなる。

一つの「いいね」がうれしくて、もっと「いいね」が欲しくなって、「いいね」がもらえる方法を追求していくうちに、とにかく人を驚かせ、なんでもいいから注意を得ることが目的となる。注意が貴重な資源だからこそ、それを奪い合う。手段を先鋭化し、いかに目立つかの争いになっていく。注意には中毒性がある。

現実では他者はそれぞれに忙しいのであり、あなただけに注意を向けることは不可能だ。だから他人と自分とを切り離すことが必要で、大事な人から注意をもらえたら、それもいつもではなくて肝心な時だけでも注目してもらえたら、とてもラッキーなことだ。私たちは人からいつも注目してもらわないといけないと勘違いすることがあるが、本当は僅かな注目でさえ私たちに与える安心感は非常に大きく、それが私たちの世界を冒険する勇気となる。

次ページ世界から引きこもるか? 世界を冒険するか?
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事