「熟年離婚が怖い」「子どもに嫌われる」60代男性の悩み。パートナーや子どもに依存しないで生きるには?精神科医・和田秀樹氏の処方箋
ただしこれは、年を重ねて急に問題が深刻化したわけではありません。それまで仕事に向かっていた意識が家族に向いたことで、問題に直面する機会が増え、積み重なってきた歪みを自覚した結果といえるでしょう。
どちらかの定年退職や、子どもの独立がいい例です。
夫婦2人で顔を合わせる機会が増えて、楽しい人たちはいい。けれど、2人でいても会話が続かなかったり、意見が合わず言い合いになったり、気が重くなってしまったりというケースが少なくありません。
久しぶりに旅行に行って、長年お互いに見て見ぬふりをしてきた価値観の違いが浮き彫りになってしまうケースもあるでしょう。新婚旅行での成田離婚が多いのと同じです。
なぜかというと、パートナーもまた、変化しているからです。
特に長年にわたり家庭を支えてきた女性にとって、子育てが一段落し、自分の時間を持てるようになるこの時期は、いわば人生の第2章。「自分のやりたいことをようやく楽しめる」と感じているのかもしれません。
自分の時間を充実させる
では、どうすればいいのでしょうか。
一緒に過ごしたいのであれば、奥さんの興味関心を知ることだと思います。自分が仕事に打ち込んでいた間に、どんな人付き合いをし、どんなことに喜びを見出していたのか。そこに関心を寄せ、会話を増やしていくことが、心の距離を縮める近道になるかもしれません。
また、いきなり旅行に誘うのではなく、近くのカフェや美術館、散歩など、短い時間で提案してみるのはどうでしょう。自分の都合ではなく、相手のリズムに合わせる姿勢が、新しい関係性を育ててくれます。
とはいえ、無理することはないと思います。
お互いの個人の時間や空間を尊重して必要以上に一緒に行動しない、というスタンスで、相談者さん自身が自分の時間を充実させていく。個人的には、そちらのほうを推奨したいですね。
「老後は夫婦で仲睦まじく」を理想とする人にとっては物足りないかもしれませんが、夫婦だからといって一緒に行動をしなければいけないわけではありません。また、関心を持たなければいけないと無理なプレッシャーを感じる必要もありません。



















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