クマ問題に絡めて写真配置…宇多田ヒカルさん「本人の私でも騙されそうになったわ」。読者をミスリードに誘う《進化型コタツ記事》の脅威とは?

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クマ
現在、日本で問題化しているクマ被害。宇多田ヒカルさんとそれを関連づけたあるネット記事が話題となった。本稿では、「コタツ記事」という言葉を発案した筆者が、「進化型コタツ記事」について解説する(画像:コンチ / PIXTA)
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歌手の宇多田ヒカルさんが苦言を呈する

「え??十年以上前とはいえ、んなこと言うわけないよね」(宇多田ヒカルさんの公式Xより)

2025年11月4日、週刊女性PRIMEが配信した記事が話題になっていることを知り、歌手の宇多田ヒカルさんは驚いた。

クマ被害が社会問題化する中、当該記事は冒頭で匿名ユーザーがSNSに投稿した過激発言を紹介していた。

「クマを殺す奴、ハンターに天罰が下りますように」

その直後に配置されていたのが宇多田ヒカルさんの写真。記事中には「ネット上の声」と書かれていたが、「これは宇多田ヒカルの発言ではない」とも明記していない。

実は記事の後半、つまり冒頭での強い印象を与える言葉から離れた場所に、極めて穏当な宇多田さんの発言が紹介されているが、印象は薄い。まるで免罪符として、懐の奥にしまってあるかのような配置だ。

宇多田ヒカルさんがクマ好きであることはファンの間では広く知られ、楽曲としても歌われているほど。そんな中での巧妙な写真配置に、宇多田ヒカルさん本人が「こんな発言に憶えはないけど、もしかするとどこかで(無意識に文脈の一部として)話していたのかも?」と疑い、スタッフに確認をしてもらったほどだった。

ありそうで、なさそうで、100%は否定しにくい、ほんのりとした印象。それをSNS上の誰が発言したかも不明確な、そして刺激的な言葉と近い距離に置いて記事を作る。

現代のコタツ記事は、単に取材を省略して机の上だけで完結する記事ではなく、心理的なテクニックを用い、読者にミスリードをさせることでPV(ページビュー)を獲得する「進化型コタツ記事」になっている。

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