以前と比べて食事量が減っていた、ある認知症患者さんは、虫歯が痛いのが原因で思うように食べられなくなっていたのですが、認知症の影響から、それを周囲に伝えることができずにいました。
そんななか、訪問介護に訪れた介護士が、患者さんが食事中にしかめっ面をしていることに気づきます。介護士からそれを聞いて虫歯の可能性を考えた私は、すぐに訪問歯科を呼び、治療した結果、虫歯が治り、元どおり食べられるようになりました。
専門医と在宅医の連携が必要
在宅医療では、手術やCTやMRIといった精密検査はできませんが、自宅でも行える検査や診察から、ある程度の診断や治療ができます。そのうえで必要なら、病院やほかの専門による訪問診療と連携しながら、治療を行える環境があります。
例えば、訪問歯科では口腔ケアに始まり、虫歯や歯周病の治療、抜歯、入れ歯の作成や調整、嚥下リハビリテーションなどにも対応しており、嚥下機能検査などの各種検査にも対応しています。
眼科の訪問診療では、眼底や眼圧などの各種検査を行ったうえで、診断ができます。
皮膚科については、湿疹やかゆみなどの治療に始まり、寝たきりの高齢者に多い褥瘡(じょくそう:床ずれ)の処置や治療などは、ほぼ在宅医で対応できるものの、専門医の診断が必要なケースでは、訪問診療してもらえる体制があります。
いずれも、在宅医の診療を受けていれば、必要に応じて訪問診療に対応している専門医を紹介してもらえます。在宅医からの紹介ということで、患者さんやご家族にとっても安心できる場面が多いように感じます。
専門医が自宅に来てくれるメリットは、通院の負担がなくなるということにとどまりません。
医師目線でいうと、患者さんの自宅に行くことで、生活状況がよりわかりますし、介護者がいる場合はその人から話を聞くこともできます。それによって、生活状況に合わせたケアが提案しやすいという利点もあります。
いざというときに、日頃から患者さんを診ている在宅医と、各領域の専門医とが連携して患者さんを診ることができるのは、在宅医療ならではのメリットです。
寝たきりなどで外来を受診できなくても、自宅でベッドに横になったまま、専門医の検査や治療を受ける体制があることを、ぜひ覚えておいてほしいと思います。
(構成:ライター・松岡かすみ)
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら



















無料会員登録はこちら
ログインはこちら