寝たきりの母に異変「見たことのないブツブツが…」娘が主治医にかけた電話――在宅専門医が伝える通院できない患者の「皮膚や目、歯の不調対応」

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Aさんから相談を受けた筆者は、「これは皮膚科医の診察が必要だ」と判断し、すぐに訪問診療を行っている皮膚科医を探し、母親の往診を依頼しました。発疹の正体が何なのか、適切な治療にスムーズにつなげるためには、早い段階で専門医に診てもらい、確定診断を受ける必要があると思ったのです。

Aさんの自宅に来てもらった皮膚科医が診ると、発疹は皮膚の自己免疫性疾患である水疱症(水疱性類天疱瘡:すいほうせいるいてんぽうそう)だとわかりました。

水疱症は、かゆみの強い赤い斑点と水ぶくれが全身にできる疾患で、高齢者に多く見られます。重症だとステロイドの飲み薬が必要になります。在宅でも治療できる疾患ですが、Aさんの母親の場合、水疱症の典型的な発疹ではなかったため、皮膚科の専門医に相談した経緯がありました。

筆者は在宅医として、なるべく副作用が起きないようステロイドの服用量について、皮膚科医と一緒に考えました。

というのも、水疱症そのものの治療は皮膚科医の役目になりますが、水疱症で生じる全身への影響を踏まえ、どんな対策を取ればいいのか考えるのは、在宅医の役目になるからです。

特に高齢者の場合、ステロイドの飲み薬で副作用が出やすいため、より慎重な治療を要します。そのため、Aさんの母親がステロイドの服用を始めてからは、状態を注意深く確認していました。

在宅医療の場合、家族の関わり方も治療を考慮するうえでのポイントになります。そのため、ステロイドの服用について検討する際には、Aさんの母親への関わり方や思いなど、病気以外の情報について皮膚科医に伝えるのも、在宅医としての役目でした。

また、ご本人が意思表示をできない場合は、これまでの長い関わりの中で家族から得た情報、家族自身の思いなども踏まえて、ご本人の思いを可能な限り推定し、治療やケアに反映します。

結果的に、Aさんの母親は治療を始めて2週間ほどで全身の発疹がかなり治まったため、徐々に服用量を減らしながら様子を見ていきました。

水疱症は、長期にわたって経過を観察しなければならない皮膚の病気ですが、うまく改善につなげられたのは、迅速に専門医と連携し、スムーズに治療を行えたからこそだと感じています。

皮膚や目、歯の困りごとは?

在宅医療を受けている間に、今回のAさんのように皮膚や目、歯に困った症状が出てきたら……。特に寝たきりなどで外来を受診できない場合、どうしたらいいでしょうか。

実は、こうした診療科の病気でも、在宅医が訪問診療を行っている専門医(皮膚科医、眼科医)などと連携をとることで、自宅にいながら診断や治療を受けることができます。

基本的に在宅医は、幅広い視点から患者さんの症状を診ています。皮膚や目の病気であっても、一般的な病気であれば診察や治療、薬の処方を行うことができます。

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