寝たきりの母に異変「見たことのないブツブツが…」娘が主治医にかけた電話――在宅専門医が伝える通院できない患者の「皮膚や目、歯の不調対応」

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しかし、場合によっては、その領域の専門医と連携をとりながら患者さんを診たほうがいいこともあります。その1つが眼科です。

筆者が担当していた糖尿病の患者さんで、「赤いものがチラチラ見える」という症状を訴える人がいました。糖尿病の影響で、網膜症を発症していたこともあり、眼底出血を起こしている可能性を考えました。

しかし、この患者さんは数カ月前に脳梗塞を発症した影響で完全に寝たきりとなり、これまで通院していた眼科に通院できる状況ではなくなっていました。

そこで訪問診療を行っている眼科の専門医を探して連絡をとり、診てもらったところ、「赤いもの」の原因はやはり眼底出血だとわかりました。

通常、広範囲におよぶ眼底出血にはレーザー治療が必要になりますが、先述の通り、寝たきりで病院に行くのが難しい状態。そうした状況を踏まえ、眼科医とよく相談したうえで、まずは内服薬の治療で経過を見ることにし、結果的に大事に至らずにすみました。

「眼科のお医者さんにも、自宅で診てもらえるなんて」と驚いていた患者さんでしたが、眼科医にもよく相談したうえで治療の選択ができたため、自宅でも不安なく過ごせたようです。

このケースでは、眼底出血が治ったあとも、筆者は今まで通り内科的な治療を継続しつつ、眼科の専門医が定期的に患者さん宅を訪問して、診てくれています。

このように自宅にいながらも、専門医に直接、定期的に診てもらえる体制があると、患者さんにも不安なく治療の選択ができ、大きな安心感につながると思います。

「通院」できない人が受ける医療 

連載でも何度かお話ししていますが、在宅医療の対象となるのは、慢性的な病気や障害などで「通院が難しい人」です。

寝たきりの方だけでなく、足腰が悪くて歩いたり階段を上ったりすることが困難な方、認知症があって周りのサポートが必要な方なども対象になります。それは、皮膚科や眼科、あるいは歯科でも同じです。

もちろん地域差などはありますが、こうした診療科でも訪問診療に対応している専門医にアクセスできれば、自宅にいながら診察や治療を受けることができます。

特に歯科は在宅医療のなかでも連携することの多い診療科で、訪問歯科という専門医療があるように、訪問診療に対応している専門医が多いです。

歯科は虫歯や歯周病だけでなく、嚥下(えんげ)機能にも関わる大切な診療科です。高齢者の場合、誤嚥性肺炎を防ぐためにも定期的な口腔ケアは欠かせませんし、「食べられなくて困っている」という患者さんの原因が、実は入れ歯のサイズが合わない、歯が抜けてしまったなど、口腔トラブルにあったというケースはよく見られます。

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