3.11被災地での約束から始まった第二の人生ーー日本で突然「クビ宣告」を受けたチリ人が、東京の片隅で《モヒカン姿のシェフ》になるまで

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こうして2012年、レストラン「カサ・デ・エドゥアルド」が東京・赤坂にオープンした。「エドの家」という意味だ。翌年には新中野駅そばの小さな路地に移転し、10年以上この街を見続けてきた。路地に並ぶ小さな店たちとは仲が良く「そこのとんかつ屋さんもよく行くよ」と話す。

いまや新中野の名物でもある「カサ・デ・エドゥアルド」の店主、エドさん(筆者撮影)

日本でも珍しいチリ料理とエドさんのトークが楽しめる店

「これエンパナーダ。熱いうちに食べて、味変わっちゃうから」

雑然としたカウンターバーのような「江戸の家」で、まずエドさんが運んできてくれたのはスペインやラテンアメリカで広く親しまれている包み焼きのパン。国や家庭によって中の具材はさまざまだが、ここでは牛・豚・鶏の合挽肉と玉ねぎ、ゆで卵、それにレーズンなどがみっちりと詰まっており、さくさくホカホカだ。

「まずひと口、食べてみて。それから、これ乗っけるともっとおいしい」

お客のほとんどが注文する、自慢のコーンパイ(手前)とエンパナーダ(奥)(筆者撮影)

そう言われて添えられたのは、特製のサルサ。トマト、にんにく、玉ねぎ、パクチー、オリーブオイルからつくったとかで、エンパナーダにはぴったりだ。

「このコーンパイもおすすめ。日本人みんなびっくりする」

コーンパイは、やはり合挽肉にたっぷりのトウモロコシを乗せてオーブンでグラタンのように焼いたチリの郷土料理で、現地ではパステル・デ・チョクロと呼ぶそうな。コーンの食感と甘味が挽き肉とよく合い、なるほどこれは美味しい。

ほかにもステーキや、前もって注文しておけば軒先のグリルを使ってのバーベキュー、お好みのチリ料理もつくってくれる。南北に細長く、長大な海岸線を持ち山岳地帯から砂漠まで有するチリの食文化は、食材の多様さ、素材を活かしたシンプルな味つけが特徴だとか。

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