物理的な問題以上に深刻なのが、精神的な理由でモノが捨てられないケースだ。
かつてイーブイが作業を担当した現場に、シングルマザーと高校生の息子が暮らしていた団地の1室があった。ある日、母親が仕事から帰宅すると、息子が自ら命を絶っていた。息子の心の変化に気づけなかったことを、母親は深く悔やんだ。
やがて引っ越しが決まり、母親はイーブイに片付けを依頼した。しかし、見積もりの日、息子の部屋を前にした母親は「やっぱり片付けられない」と言い、結局、自分の荷物だけを新居へ運び、元の家を契約し続けたという。

故人のモノは、いつ捨てるべきなのか

故人のモノを捨ててしまうと、その人がこの世に生きた証しまで消えてなくなってしまうような気がしてしまう。多くの遺族が、そうした葛藤を抱えている。
「生活や家の中に余裕があるうちは、故人のモノを無理に手放す必要はないと思います。しかし、残した荷物が、いずれご自身の生活を圧迫してくるときが来るかもしれません」
収入と家賃のバランスが取れなくなり、より狭い家に引っ越さなければならなくなる。そんなとき、遺族は業者に依頼をする。それは、自分では下せない決断を、第三者の力で後押ししてほしいという切実な気持ちの表れでもある。
「もし、故人が残したモノが今のあなたの生活を圧迫しているのでなければ、無理に捨てる必要はまったくありません」
そう思うだけで、葛藤を抱えている遺族も少し楽になるはずだ。


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