東大文学部卒が《劇場版 「鬼滅の刃」無限城編》を観て感じた、前作『無限列車編』との決定的な差 興収340億円超で歴代2位も前作には及ばない?

2020年10月、日本映画界の歴史が書き換わった。興行収入ランキング不動の1位だった『千と千尋の神隠し』(2001)の316.8億円を90億円も上回った怪物級の作品が誕生したからだ。ダークホースの名は『劇場版 「鬼滅の刃」 無限列車編』。週刊少年ジャンプにて2016年から連載された大人気冒険活劇のアニメ化作品だ。
前作『無限列車編』の快挙

劇場放映された『無限列車編』では、単行本7巻~8巻で繰り広げられた無限列車における一連の戦いが描かれた。1巻から6巻までの内容は、先駆けてテレビ放映されたアニメ版にて公開されているとはいえ、続き物のアニメのうち、1つのエピソードだけを2時間尺の映画にしてしまうのは、非常に挑戦的な試みだ。普通ならばアニメオリジナルストーリーを構成する。なぜならば、前後に物語が連続する作品の内、一部分を切り取って映画化してしまうと、直前までの流れを知らなければ劇場へ足を運ぶ動機が無くなってしまうためだ。
そこへ追い打ちをかけたのは新型コロナウイルスによる自粛ムードだ。誰もかれもが家に閉じこもり、学校も仕事もオンラインが基本となった。筆者は職業柄、現役高校生や大学生と交流があるが、コロナ直撃世代である今の18歳~22歳頃の子どもたちは「修学旅行」の経験がない子も多い。当時の旅行産業は悲惨で、航空業界では「空港から人が蒸発した」と嘆いたそうだ。遠出はもちろん近場の外出も自粛となり、劇場に足を運ぶ必要がある映画産業は、やはりダメージを受けた。
しかし、『無限列車編』はこの流れをよく断ち切った。ふたを開けてみれば興行収入は歴代1位で、400億円台の興行収入は未だに比類する映画がない。2020年3月から8月まで東宝の映画興行事業は大幅赤字だったが、9月~11月期は一転黒字になったそうだ。
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