東大文学部卒が《劇場版 「鬼滅の刃」無限城編》を観て感じた、前作『無限列車編』との決定的な差 興収340億円超で歴代2位も前作には及ばない?

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興行収入も好調で、公開後67日時点で、『千と千尋』を抜き去り341億円にまで到達。公開してから2カ月以上経つというのに、今でも1日に複数スクリーンで同時上映している映画館もあり、まだ勢いは続きそうだ。

私ももちろん『無限城編』を観てきた。平日の昼間だというのに、多くの人々が劇場に詰め掛けていて、ほとんど満員。だが、期待に反して、個人的にはあまり刺さらないまま劇場を後にした。今回の『無限城編』が、化け物級だった『無限列車編』と比較するとイマイチ伸びきらない要因も、そこにあるように感じる。

『無限列車編』と『無限城編』の最大の違い

『無限列車編』と『無限城編』の最大の違いは、構成にある。『無限列車編』では、作中で描かれた無限列車に関わる一夜の物語が、余すところなく描かれた。マンガ版では描かれていなかった列車に乗り込むシーンなど、多くのカットが追加されていたが、これらも本編のテンポを損ねず、むしろよい補完として機能していた。本編をそのまま劇場版に起こしたら尺が足りなくなるがゆえの「尺稼ぎ」的な側面もあったのだろうが、そうした蛇足感は全くなかった。

無限列車に乗り込む炭治郎たち
前作『劇場版 「鬼滅の刃」 無限列車編』(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

一方で、今回の『無限城編』は、そもそも無限城決戦に関わる大きな物語の内、前半1/3しか描かれていない。これは尺的な問題が大きいのだろうが、そうすると新たな問題が浮上してくる。それは、広大な無限城各所に散らばった隊士と鬼が各所で独立して行動しており、偶発的にエンカウントしたタイミングで戦闘が始まる群像劇的な仕立てになっていることだ。

おかげで、とにかくテンポが悪い。まず「上弦の弐」童磨と邂逅した蟲柱・胡蝶しのぶとの1対1が描かれ、次に「上弦の陸」と鬼殺隊士の我妻善逸との戦いが描かれ、その間にはそれぞれのキャラクターの回想が余すことなく挿入され……。

胡蝶しのぶ
蟲柱・胡蝶しのぶ(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

本作のサブタイトルは「猗窩座再来」と銘打たれているが、猗窩座がスクリーンに再来するのは、劇場内が暗転してから1時間半も経ってからのことだった。原作再現を心がけたからこそ、どうしても躍動感のある戦闘シーンとゆったりした回想シーンとの行き来が、短い間で何度も反復横跳びのように繰り返され、結果として感情に訴えかけるドラマ的緊張を生み出す演出に失敗している印象を受けた。

十二鬼月・上弦の参である猗窩座(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
十二鬼月・上弦の参である猗窩座(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
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