東大文学部卒が《劇場版 「鬼滅の刃」無限城編》を観て感じた、前作『無限列車編』との決定的な差 興収340億円超で歴代2位も前作には及ばない?
これは、そもそも映画化された部分が20巻以上にも及ぶ激闘の最終決戦という最高潮のシーンであることも要因だろう。「最初からクライマックス」と言えば聞こえはいいし、その緩急を回想シーンで作り出そうとしたのだろうが、ほぼ原作通りの展開なのだから、原作を読み込んでいる人ほど退屈になってしまう印象を受けた。
「三幕構成に収めよ」なんてチープで陳腐なことは言わないが、それでも劇場版と銘打つのであれば、劇場で見るに適した形に再構成してほしかった。

上弦の鬼たちとの戦いの中で時に傷つき、時に覚醒する仲間たちのタイムラインは、奇跡的にかみ合っており、これらどれかが狂ってしまえば、原作通りのような結末を迎えることはできないだろう。ましてや、注目度の大きい本作のことだから「原作改変」なんて、あまりにも恐れ多い所業はできない。おそらくは、そうした判断の下になされた「完全原作再現」のスタイルは、多くのファンから歓迎されているようだが、個人的にはそれゆえに“映画”になり切れなかったように感じるのだ。
テレビアニメの総集編を劇場で見せられたようだった
だが、本作を絶賛する層ももちろん多くいる。私と彼らとの違いは、「”映画”を観に行ったのか否か」だろう。私の友人にもファンはいるが、彼と話した結果、彼は映画を観に行ったわけではないと気づかされたのだ。
つまり、彼は、アニメ化された『鬼滅の刃』を観に行っているのであり、「ひとつの映画作品」を観に行ったわけではなかった。
そう考えると、非常に納得がいく。素晴らしい作画、演出効果、豪華声優陣の迫真の演技……。これらについては、私は何の文句もない。

私自身も、家路につきながら「まるで、テレビアニメの総集編版を、劇場で見せられたようだった」と感想を抱いた。ただ一つ、構成についてのみ、「もっと映画らしくあってほしかった」と物足りなさを感じていた。逆を言えば、映画らしさにこだわらなければ、本作はこれ以上ないほどファンサービス精神にあふれた「神作」と言えるのかもしれない。
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