「卵は1日1個まで」に科学的根拠はあるか…「卵を食べれば食べるほど心血管病のリスクが上がる」という論文の本当のところ

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2つ目は、卵を食べる代わりに何を食べるのか、人によって全然違うという点です。卵を食べる代わりに魚などから良質なたんぱく質を摂れば健康に良さそうですし、代わりにソーセージなど加工肉を食べるなら健康を害しそうです。

卵をたんぱく質源と見なすか脂質源と見なすかによっても、この議論は変わってきます。そこまで追求して調べた研究はほとんどありません。この「代わりに何を食べるか」という視点抜きに「卵を何個食べたか」を議論しても、健康効果に関して具体的に言えることはありません。

これらの点は、これから食事の科学が対象としていくべきトピックであり、現時点では信頼性の高い知見は得られていません。「卵が健康に良いのか悪いのか」「悪いとすればいくつまで食べても大丈夫なのか」というのはわかっていないのです。

というか、「卵が健康に良いのか悪いのか」という質問自体、少しナンセンスです。そして、平均の効果ですら議論の余地があるわけで、より個別的な「あなた」への効果なんてわかるわけありません。

結論としては、卵はすごく健康に良い食材とは言えないまでも、頑張って制限するほどの根拠には乏しい、という理解で良いでしょう。

1日10個はやめたほうが無難

なお、極端な食べ方が健康に良いはずはありません。筋トレをしている方が1食に10個もの卵を食べたりしますが、健康を考えればそれはたぶんやりすぎです。

いわゆる「筋トレ食(加工食品を減らし、ブロッコリーなど野菜を十分摂り、卵・豆・鶏肉などからたんぱく質を摂る食事)」には健康に良い側面もたくさんあり、筋トレをしている人は若々しかったりします。しかしそれが直接的に卵の影響とは言えません(そう考える人は少ないかと思いますが)。

そのような食べ方が悪いことを示唆する直接的な科学的根拠はありませんが、特定の食材の摂取量を増やしすぎると、その他の食材の摂取量は必ず少なくなります。結果として、バランスよく、さまざまな栄養素を摂ることが難しくなります。ですので、健康を考えた場合、極端な食習慣はやめた方が無難です。

【参考文献】
※1. Zhong VW, Van Horn L, Cornelis MC, Wilkins JT, Ning H, Carnethon MR, Greenland P, Mentz RJ, Tucker KL, Zhao L, Norwood AF, Lloyd-Jones DM, Allen NB. Associations of Dietary Cholesterol or Egg Consumption With Incident Cardiovascular Disease and Mortality. JAMA. 2019;321:1081-1095.
※2. Zhao B, Gan L, Graubard BI, Männistö S, Albanes D, Huang J. Associations of Dietary Cholesterol, Serum Cholesterol, and Egg Consumption With Overall and Cause-Specific Mortality: Systematic Review and Updated Meta-Analysis. Circulation. 2022;145:1506-1520.
※3. ※2に同じ.
※4. Drouin-Chartier J-P, Chen S, Li Y, Schwab AL, Stampfer MJ, Sacks FM, Rosner B, Willett WC, Hu FB, Bhupathiraju SN. Egg consumption and risk of cardiovascular disease: three large prospective US cohort studies, systematic review, and updated meta-analysis. BMJ. 2020;368:m513.
濱谷 陸太 ハーバード大学医学部講師/医師

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はまや りくた / Rikuta Hamaya

専門は予防医療、特に食事やサプリメントを用いた予防的介入の個別化。循環器内科医として臨床経験を積んだ後、ハーバード大学で疫学博士を取得。現在はブリガムアンドウィメンズ病院で予防医療研究の講師(インストラクター)を務める。また、日本で株式会社エブリワン・コホートを創業し、日本の予防医療を発展させるべくCEOとして活動中。3児の父。

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