2022年までの研究をまとめると、卵をたくさん食べることで(平均的に)心血管病のリスクが少し上がることが示唆されています(※2)。この研究のまとめは、当然前述した2019年の研究を含んでいます。
しかし平均の効果が「あなたでの効果」なわけではない、ということが原則です。実際にこの研究を細かく見ると、全く異なった示唆すら得られます。
まず、この「卵は健康に悪い」という平均の効果自体、あまり信頼性が高くありません。例えば、アメリカの研究では卵は健康を害するが、アジアの研究では卵と健康にはあまり関連性がない(むしろ予防的に働き得る)、という一貫しない結果が認められています(※3、※4)。
しかし、人種によって卵の健康効果が違うというのは、いまいちピンときません。これに対する説明はこの研究からは得られていませんが、1つ重要な視点は、卵単独の効果というより、卵と一緒に何を食べるかという「卵に関連した食習慣」を見ているのではないか、というものです。
研究で「卵摂取量」というデータを扱っても、実はそれは「卵摂取と関連する食習慣」の影響を見ている、という可能性は十分にあり得ます。というより、卵単独の効果を推定することができている研究はほとんどない、という見方が主流です。
アジア人と欧米人では、卵と一緒に食べる食材・卵を使った料理は全然異なりますね。例えば欧米では卵と一緒にソーセージやベーコンなどの加工肉が添えられる可能性は非常に高いです。日本では卵焼きをお弁当のおかずとして食べる機会があります。これを比較すると、欧米での「卵摂取量が多い」というのは、「一緒に食べている加工肉の量が多い」ことを意味しており、そちらの影響を間接的に見ているだけなのかもしれません。
「卵の代わりに何を食べるのか」という視点
実はそもそも、「〇〇は1日△△まで」と具体的に制限できるレベルの詳細な食事の科学的知見を、確証度高く得ることは、非常に難しいものです。そもそも「卵を食べた方が良いか悪いか」ということすら、きちんとした検証を行うことが大変なのです。
前述の食習慣という視点の他に、「卵は1日1個まで」が信じられない理由を2つ紹介します。
1つ目は、その「卵の消費量」がどれほど信頼性に足るものか、という視点です。冒頭で紹介した研究は、ある一時点の「卵の消費量」と「その後20年の心血管病リスク」を比較し、検討しています。
でも卵の消費量なんて、数年経てば変わっても、全然おかしくないですよね。この変化を加味しなければ、卵と病気発症の因果関係なんて言及できるはずもありません。
しかし残念ながら、世界には 「同じ個人の卵の消費量」をしっかり数年おきに追跡したデータというものは、あまりないのです。
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