巷の阪神ファンも変化したように感じられる。夜、阪神電車に乗ると、タイガースのユニフォームを身にまとった多数の乗客と乗り合わせる。昨年以前なら、勝っているときと負けているときはテンションが違った。勝っているときは、ファンたちは、応援のしすぎでしわがれた声でがなり立てるが、負けたときはしんみりした顔つきで座っていた。
ファンの表情を見るだけで勝ったか負けたかが分かったものだが、今年は、特に夏過ぎからは、あれ?と思うくらい変化がなかった。今年の阪神ファンは「勝つこと」を「当然のこと」と思うようになり、一喜一憂しなくなったのだ。
藤川球児監督の視線の高さ
2003年に一軍に本格デビューし、2005年の優勝時には来る日も来る日もマウンドに上がって火消しをしていた藤川球児が今年から監督に就任。松坂世代、まだ45歳というフレッシュな監督による勝利だったこともファンの気持ちを一変させた。
2年前の岡田彰布監督は当時すでに60代半ば。「俺は文句言うてんのとちゃうよ」「今日は投手の責任やんか、おーん」ともっちゃりした関西弁で、中高年のファンを沸かせたが、若いファンにとっては今一つ響かなかった。
しかし藤川は引退後、テレビで明快な解説をして好評を博しただけに、記者会見での受け答えも理路整然としていて、ヤングリーダーとしての頼もしさも見せた。
日曜日の優勝会見の最後に言った「3月にはドジャースとカブスも倒しました」は、大谷翔平ブームに沸く若いメジャーリーグファンの心もぐっととらえた。今年3月のMLBドジャース、カブスの開幕シリーズの前のプレシーズンマッチで、藤川新監督率いる阪神は大谷翔平、山本由伸、佐々木朗希がいるドジャースと、鈴木誠也、今永昇太がいるカブスを連破しているのだ。そのことに触れる藤川監督の視線の高さである。
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