ラーメン店を「バイトテロ」で閉店に追い込んだ大学生4年生が"特定祭り"で炎上、内定取り消しで土下座の末路 『子供部屋同盟』4章②

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芥川賞作家✕東洋経済オンラインの「異色コラボ」連載小説!
「子供部屋おじさん」が、あなたの復讐、請け負います。
パワハラ、詐欺、痴漢冤罪(えんざい)、書店万引き――。裁かれぬ現代社会の悪を、人知れず断罪する者たちがいた。ダークウェブに潜む謎の復讐代行組織「子供部屋同盟」。
社会から疎外された「子供部屋おじさん」たちが、その特異なスキルを武器に、歪んだ正義を執行する。
芥川賞作家・高橋弘希が放つ痛快無比の世直しエンタメ『子供部屋同盟』より、第4章を4日に分けて毎日お届けします(今回は2日目)。

「麺屋ムラカミ」開業

四月十日、店舗近くの千葉公園の桜が満開のころに、麺屋ムラカミは開業した。絢香は胸の高鳴りを覚えながら“麺屋ムラカミ”と記された藍色の暖簾を店頭へ掛けた。彼の夢を密かに応援していた自分が、彼と一緒に夢を叶えることになるだなんて、大学生のころは考えてもいなかった。

子供部屋同盟
『子供部屋同盟』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら。楽天サイトの紙版はこちら、電子版はこちら

開店待ちの列の中に、見覚えのある白髭の爺さんがいた。石井の親父さんだった。

「なにせ、わしの弟子第一号の店だからな。しかし二人がつきあってたなんて、当時はぜんぜん知らんかったぞ。こんな可愛らしい嫁さんをつかまえて、まったく村上も隅に置けんな」

夫はラーメンを食べ終えた親父さんに、緊張気味に味の感想を訊いた。親父さんは白髭を撫でつつ言う。

「もうおまえにアドバイスはやらん。なにせこれからは商売敵だからな」

それを聞いて夫は肩を落としたが、たぶん親父さんなりの誉め言葉なんだろうと絢香は思う。

初日こそ売上は想定を上回ったが、やはり商売は甘くないもので、店には次第に空席が目立つようになった。一日の売上が五万円なんて日もあり、テナント料を支払ったら利益がわずかという月もあった。

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