工藤たちは雇い始めこそ真面目に働いていたが、仕事に慣れてくると、次第に勤務態度に問題が出てきた。
仕事中に私語をする。お客さんへの愛想がない。ときに遅刻してくる。その都度、夫か絢香が注意はしていたが、三人とも生返事をするばかりで反省しているのかどうかよく分からない。しかも今の若者は、あまり強く当たるとすぐ辞めてしまうかもしれない。
気の進まない飲み会
そんな折、ある晩の閉店作業の最中に、工藤からグループLINEが届いた。なんでも同じ通り沿いの居酒屋に富田と佐伯といるから、よかったら一緒に呑まないかという。
夫はまだ事務室で経理作業をしている。グループLINEの内容を告げると、夫は電卓から顔を上げて言う。
「まぁ付き合いも大事だし、顔を出すくらい、いいんじゃないか。俺も経理が終わったら合流するよ」
確かに菓子メーカーに勤めていたころ、まだ飲み会は重要視されていた。君みたいな年の離れた部下と親睦を深めるには飲み会が一番だよ、と上司は苦笑していた。絢香にとって、今は工藤たちが年の離れた部下とも言える。
あまり気はのらなかったが、絢香は夜の街路を歩いて指定された居酒屋へと向かった。
座敷の座布団で胡坐(あぐら)を組んだ三人は、イカ焼きやら手羽先やらをツマミにビールを呑んでいた。三人とも赤らんだ顔で、すでにかなり酔っている。呂律も回っていない。
絢香はテーブルの端の席に座ると、ハイボールに口をつける程度にして、夫の到着を待った。
当たり障りのない雑談を半時ほどしたのちに、富田が唐揚げを頬ばりつつ言う。
「でも絢香さん、なんで店長と結婚したんですか?」
「なんでって、どういうこと?」


















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