「でもどうしてあのとき俺とつきあってくれたの?」
「どうしてって、どういうこと?」
「別に俺ってイケメンでもないし」
「でも子熊みたいで可愛いからいいじゃない」
「熊? そんなふうに俺のこと見てたの?」
「じゃあ、どうしてあなたはわたしのこと好きになったの?」
「一目惚れに決まってるじゃないか」
「当時のわたしって、そんなに可愛かった?」
「若いときの加賀まりこみたい」
「それって褒めてるの?」
「君、若いときの加賀まりこを見たことないでしょ」
3人の大学生アルバイト
そんな戯れのあとに夫はもらす。
「でもそろそろ従業員を増やさなきゃいけないなぁ。さすがに二人だけじゃ回し切れなくなってるし」
その通りだった。二人で営業しているがゆえに回転率は悪く、お客さんを随分と待たせてしまっている。ネットでもこの点を指摘するレビューをちらほら見かけた。今の売上ならば、何人かアルバイトを雇っても充分にやっていける。
地元誌にアルバイトの募集を出すと、三人の大学生から応募があった。夫が事務室で簡単な面接をした。三人とも、どこにでもいる普通の大学生だったという。絢香は彼らの履歴書を、一枚一枚捲っていく。
工藤、富田、佐伯──。
履歴書を見る限り、絢香にも普通の大学生に思えた。工藤はやや髪が茶色いものの不良というわけではなさそうだし、富田と佐伯に至ってはいかにも文系の学生という地味な顔立ちだ。
三人とも外資系企業にすでに内々定が決まっているので、翌年の三月ごろまで働きたいという。つまりいつかの絢香と似たような条件だった。四年生だと、授業はほとんどないのでシフトも組みやすい。三人とも採用して、夜営業のバイトとして働いてもらうことにした。


















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