と、横から佐伯が言う。
「一回りは年が離れてるし、見た目はただのおっさんじゃないですか」
絢香は眉を寄せて佐伯を見る。佐伯は鼻頭まで赤くして、薄笑いを浮かべている。
「大人にはいろいろあるのよ」
「俺たちだってもう大人ですよ。二十二歳で、来年からは大手企業に勤める社会人。それにさ、俺のほうがイケメンでしょ?」
「そうね」
と、向かいの席でビールをちびちび呑んでいた工藤が言う。
「旦那さんとは、週に何回してんの?」
「は?」
「いいなぁ、俺もやりたいなぁ」
絢香は工藤を睨んだが、彼はそれに気づかずに店員に次のビールを頼んだ。
結局、絢香はハイボールを半分呑んだところで、千円札を置いて席を立った。工藤たちは、えー、せっかく盛り上がってきたとこだしもっと呑みましょうよぉ、などと引き留めてきたが、絢香はかまわず店を出た。
と、今ごろになって街路の向こうから夫が歩いてきた。
「あれ、親睦会はどうなった?」
「今日はもうお開きになった」
「え、お開き? なんだ、明日は定休だし、俺もビール一杯くらい呑みたかったなぁ」
「じゃ、缶ビール買って家で呑みましょ」
絢香は夫の腕をつかんで、夜の街路をつかつか歩いていく。
口コミサイトの低評価レビュー
工藤たちの勤務態度は、その後も改善することはなかった。
絢香が注意をしてもやはり生返事をするばかりで、聞いているのかどうか分からない。何を考えているのかも分からない。
そんな折、口コミサイトに低評価レビューを書かれた。
──バイトの態度が最悪でした。注文間違えるし、注意してもヘラヘラしてるし。もう行くことはないですね。せっかく味はいいのに残念です。


















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