映画『8番出口』が"ホラー"なのに異例ヒットの理由。興収初速は『国宝』超え!原作ゲームは「脱出ホラー系の怪作」。何が観客の心を掴むのか?

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それは、近年の日本が頻繁に直面する多くの自然災害のメタファーであるように思えた。どんなにつらく悲しい出来事や、想定外の事故や事件が起きたとしても、人生はその後も淡々と続いていく。

そこには、世間の関心がいかに一過性に陥りやすいかが、映し鏡的に示されている。悲劇に心を痛めた観客たちは、時間の経過とともにいつの間にか当事者のことを忘れ去る。悲劇は世間に消費され、当事者は置き去りにされる生々しい社会の現実が映されている気がする。

ここに込められているのは、世の中的なヒット作であり話題作である本作が、そんな映画を観に来る観客たちに投げかけるメッセージであり、社会への警鐘ではないだろうか。

二宮和也
主演の二宮和也(C)2025 映画「8番出口」製作委員会

世界的ヒットへの期待が高まる理由

もともとストーリーのないゲームのシンプルな白い空間だからこそ、そこにはさまざまなテーマが成り立つ。それは観る人によって見え方が違い、楽しさが異なるが、誰もが楽しむことができる。そんな映画だから、若い世代の感性に刺さり、大ヒットしているのだろう。

本作には、海外でのヒットへの期待も高まっている。すでに「第78回カンヌ国際映画祭」の公式上映で大きな話題になったが、この先もアジア最大規模の「第30回釜山国際映画祭」をはじめ海外映画祭への出品が続く。

地下鉄駅の通路という物語の舞台は、全世界どこでもほとんど変わらない。その空気感は世界中で共感され、親近感を抱かれることだろう。そこに日本ならではのストーリーテリングの妙が光る本作は、カンヌに続いて世界各地で話題になっていくに違いない。

日本発のホラー映画はこれまでにもJホラーとして海外で人気を得てきた。その系譜でありつつ、テーマや物語に新規性のある新たなジャンルの作品として、世界で評価されていきそうだ。

【もっと読む】《映画歴代興行収入ランキング》4位に『鬼滅の刃』の衝撃!『国宝』はTOP50入りも、“TOP10に邦画実写ゼロ”。2つのランキングから傾向を解説では、映画に詳しいライターの武井保之氏が、映画歴代興行収入ランキングから見えるトレンドについて詳細に解説している。
武井 保之 ライター

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たけい・やすゆき / Takei Yasuyuki

日本およびハリウッドの映画シーン、動画配信サービスの動向など映像メディアとコンテンツのトレンドを主に執筆。エンタテインメントビジネスのほか、映画、テレビドラマ、バラエティ、お笑い、音楽などに関するスタッフ、演者への取材・執筆も行う。韓国ドラマ・映画・K-POPなど韓国コンテンツにも注目している。音楽ビジネス週刊誌、芸能ニュースWEBメディア、米映画専門紙日本版WEBメディア、通信ネットワーク系専門誌などの編集者を経て、フリーランスとして活動中。

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